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頂新食用油事件に一審無罪、不買運動再び


ニュース 食品 作成日:2015年11月30日_記事番号:T00060679

頂新食用油事件に一審無罪、不買運動再び

 ベトナムから輸入した飼料用油を混ぜた食用油を製造、販売したとして食品安全衛生管理法違反、詐欺などの罪で起訴され、懲役30年が求刑された頂新国際集団傘下、頂新製油実業の前董事長、魏応充被告(58)ら6人の被告の裁判で、彰化地方法院は27日、検察の立証が不十分として全員に無罪判決を下した。社会を大きく揺るがした事件に対する無罪判決は多くの市民に衝撃を与え、頂新グループへの不買運動が再び始まった。28日付聯合報などが報じた。


彰化地方法院に向かう常梅峰被告(前左)。無罪判決について「ありがたい」とのみ答えた
(27日=中央社)

 彰化地方法院検察署(地検)は昨年10月、魏被告、頂新製油前総経理の常梅峰被告(59)、およびベトナムのダイハインフック(大幸福)社責任者、楊振益被告(55)ら6人が、2012年1月から違法油の製造、販売で約4億4,162万台湾元(約16億6,000万円)の不正利得を上げたとして起訴していた。

 彰化地方法院の呉永梁裁判長は無罪判決を下した主な理由として、頂新製油がベトナムから輸入した油脂が病死豚、検疫検査に合格していない食肉処理場の豚、廃油に由来することを彰化地検が明確に立証できなかった点を挙げた。その上で、同犯罪事実を立証できない以上、「疑わしきは罰せず」という刑事裁判の原則に従ったと説明した。

法解釈に隔たりか

 彰化地検の黄智勇次席検事は「必ず控訴する」と表明した。彰化地検は29日、彰化地方法院は弁護側の鑑定人の意見を全面的に採用したが、鑑定人には頂新製油が油脂精製設備を購入したメーカーが含まれ、両者には利害関係があるため同鑑定意見には全く参考価値がないと指摘した。

 彰化地検はまた、頂新製油の原料油の酸価が高過ぎ、重金属も含まれるとして安全性を問題視したが、彰化地方法院は酸価の高い原料油も精製後に食用として利用でき、重金属も精製過程で除去できると指摘。彰化地検は、問題のある原料を加工した食品が最終的に検査で合格すれば食用として利用できるのなら、食品検査や食品安全衛生管理法の存在意義がなくなると批判した。

 なお彰化地検は捜査開始から21日後に起訴に至っており、スピードを重視するあまり十分に証拠を集めなかったとの批判を受けた。これについて彰化地検は、捜査を急いだのは頂新製油とダイハインフックの証拠隠滅を恐れたためだと説明。また無罪判決が下ったのは検察の証拠が不十分だったからではなく、法解釈などについて裁判所との間に大きな隔たりがあったためと指摘した。

 頂新グループは27日、「司法の判断を尊重する」とコメントした。

与野党、検察の控訴支持

 来年1月の総統選に出馬する与野党3党の主席は27日、「無罪判決に遺憾の意を表明する。検察の控訴を支持する」と口をそろえた。中でも蔡英文民進党主席は、今回の判決を受けて、「政府には食の安全を守り、不正企業を罰する能力が足りないと感じた」と指摘した。

 柯文哲台北市長は「無罪判決は今回の総統選レースで最大の投票誘因になった」と指摘し、国民党への批判票が野党に流れると暗示した。朱立倫国民党主席は「無罪判決は国民党の選挙情勢に不利だが、裁判所は国民党が運営するものではないことを証明した」と苦しい弁明を行った。

味全や台湾スターがやり玉に

 無罪判決を受けて、インターネット上では頂新グループ傘下の食品大手、味全食品工業や新興通信キャリア、台湾之星移動電信(台湾スターテレコム)などのボイコットを呼び掛ける動きが改めて広がり、多くの市民が呼応している。

 フェイスブックでは、味全の「林鳳営」ブランド牛乳など、ボイコットの対象となる頂新グループの製品ブランドを集めた画像が多くの「いいね」を集め、シェアされている。また携帯電話で商品のバーコードを読み取るだけで頂新グループの製品か判別できるアプリケーション「冰的啦」もリリースされ、アンドロイド版では既にダウンロード数が2,000件を突破した。

 中華民国消費者文教基金会(消基会)も29日、頂新グループ傘下の全ての製品、サービスの不買運動を支持すると表明し、同会中南部の各分会も全面的に運動に呼応すると声明を発表した。

 張盛和財政部長は同日、司法を尊重する立場を示したが、法律以外に道徳の問題も重要で、自身も頂新グループの製品を買わないと表明した。

 なお頂新グループが37.17%出資する台北金融大楼(台北101ビルの運営会社)は来月9日に董監事改選を行う予定で、財政部は民間出資者の中国信託金融控股(中信金、CTBCフィナンシャル・ホールディング)などと協力して、頂新グループの監事1席を減らし、政府系株主の経営体制を固める方針だ。頂新グループは現在董事5席、監事2席を保有する。財政部など政府系株主の出資比率は52.08%で董事6席、監事2席を保有する。