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TSMC情報漏えい防止を徹底、南京12インチ工場計画


ニュース 電子 作成日:2015年12月9日_記事番号:T00060870

TSMC情報漏えい防止を徹底、南京12インチ工場計画

 ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は中国・江蘇省南京市での12インチウエハー工場計画に関し、技術流出や営業秘密漏えい防止に細心の注意を払う方針だ。中国資本との合弁でなく単独出資にこだわったほか、大勢の台湾人幹部を派遣して情報管理を徹底、生産ラインごとの分業体制で作業員に顧客や最終製品が分らないようにする。中国メーカーやサムスン電子を強く意識しているようだ。9日付経済日報などが報じた。

 サプライヤーによると、TSMCは早くから中国12インチ工場設置を検討していたが、推進が遅れたのはまさに技術流出を懸念したからだという。張忠謀(モリス・チャン)董事長は、技術や営業秘密の流出を防ぐため、単独出資以外にあり得ないとの結論を下していた。

 TSMCは、以前、元従業員が中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)に技術を流出させたり、研究開発(R&D)処長だった梁孟松氏がサムスンに転職したことを教訓に、情報漏えい防止対策を強化した。例えば、訪問客だけでなく従業員にもカメラ機能を搭載した携帯電話を工場内に持ち込むことを禁じており、かつて従業員が発売前の製品をインターネット上にアップロードした際には、名誉毀損で巨額の損害賠償を請求するなど、強い姿勢で挑んでいる。

研究開発は台湾で

 南京工場には当初、台湾人幹部を大量に派遣する一方、研究開発人員は全て台湾に残す。

 研究開発、生産中の製品は全てコードネームを付ける。一部管理職以外のライン作業員には、どの顧客の半導体チップを製造し、最終製品は何かということや、生産ラインの進度は知らされない。

 工場内にノートパソコンを持ち込む場合は、USBポートの封鎖を求め、データをコピーして持ち出せないようにする。工場内は原則インターネット接続を遮断し、特定の顧客にだけWi-Fiのパスワードを提供し、インターネット管理者が利用状況を監督する。

来年1月にも審査完了

 行政院の孫立群報道官は、TSMCの南京12インチ工場計画について経済部は国家の安全、利益を考慮して審査する上、TSMCは最先端技術を台湾に残すので、あまり心配する必要はないと語った。

 経済部投資審議委員会(投審会)の張銘斌執行秘書は、TSMCの申請書類は各部会(省庁)の審査に送付済みで、早ければ来年1月末か春節(旧正月、2016年は2月8日)までに審査が完了すると見通しを示した。

 バークレイズ証券は、TSMCは近年、中国の顧客の急成長に恩恵を受けており、今後は中国半導体産業の発展に寄与すると予想した。モルガン・スタンレー証券は、TSMCは2016、17年と設備投資が増え続ける見通しで、中国では製造コストの上昇よりも商機の方が大きいことを意味すると指摘した。

 市場調査会社、集邦科技(トレンドフォース)の予測によると、TSMCの今年の売上高は260億~270億米ドル、来年は300億米ドルの見通しだ。来年の設備投資は90億~105億米ドルで、12インチ工場拡張や、7ナノメートル、10ナノメートルなど先進製造プロセスの研究開発(R&D)が中心だ。

台湾サプライチェーンも恩恵

 毛治国行政院長は、中国政府が地場産業を支援し、輸入を減らす中、台湾メーカーも参戦しなければ中国企業から受注を得られないと強調。一方、参戦すれば、ハイエンドの受注が狙えると述べた。

 サムスン、インテルが中国で生産する中、TSMCの南京12インチ工場設置で、台湾メーカーが大部分を占めるTSMCサプライチェーンにも商機をもたらすと期待される。

【表】