ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

味全牛乳に返品運動、頂新の無罪判決に反発


ニュース 食品 作成日:2015年12月11日_記事番号:T00060923

味全牛乳に返品運動、頂新の無罪判決に反発

 頂新国際集団の不正食用油事件の関係者6人に先月末、一審の彰化地方法院が無罪判決を下したことに消費者が反発し、頂新集団傘下の食品大手、味全食品工業の牛乳「林鳳営」の不買運動が一部で返品運動に発展している。味全は10日、同社は頂新集団から40%の出資を受けているが、すべての製品で食品安全の法規を順守して生産に取り組んでいるとして市民に理解を呼び掛けた。彰化地方法院検察署は同日、一審判決に事実誤認があるとして上訴した。11日付蘋果日報などが報じた。


味全の牛乳「林鳳営」は、頂新集団ボイコットの筆頭ターゲットになっている(YSN)

 頂新集団の無罪判決に不満を抱いた新北市のある消費者が友人と共に8日、大手量販店、好市多(コストコ)中和店で味全の牛乳「林鳳営」3.685ミリリットル(ml)入り(179台湾元=約660円)40本を購入後すぐ開封して返品。これで味全に損失を与えられるとして、インターネットで返品運動を呼び掛けた。なおコストコは、商品に問題があったり、不満な場合の返品に全額返金で応じている。

 その後、返品運動はコストコ11店のうち汐止店、新竹店、台中店、台南店、嘉義店を合わせた6店に広がった。台南店では、消費者3人が売り場で「購入後すぐに返品する」と表明したため、コストコ店員が商品を一時撤去したものの、3人は無理やり13本をレジに持ち込んだ。店側が「悪意ある客に 対して売らない権利がある」と説明して30分間にらみ合いが続いたが、最終的に10本の購入を認め、3人は購入後すぐに開封、返品を行った。

返品制度を悪用、犯罪の可能性も

 コストコは、返品後の生鮮食品は開封の有無を問わず一律廃棄処分すると説明した。返品運動の被害数、およびコストコかメーカーのどちらが損失を負担するかは明かさなかった。なお、コストコ店舗で味全の牛乳「林鳳営」販売量は2位か3位で、従来1本225元だったが、頂新集団の不正食用油事件が発覚したことで今年に入り215元、3週間前には179元まで値下げしているという。

 同業の家楽福(カルフール)、大潤発(RTマート)、愛買(aマート)は、現時点で返品運動は発生していないが、コストコのように無条件で返品に応じることはないと強調した。

 消費者の間では、返品運動を支持する声が上がる一方、食べ物を浪費したり、コストコ従業員や周囲の消費者に迷惑をかける行為だとして問題視する声が聞かれた。

 財団法人消費者文教基金会(消基会)は、コストコに矛先を向けるのでなく、より洗練された手法で抗議すべきと呼び掛けた。


消基会は9日、司法院の前で、頂新集団の無罪判決に抗議した(9日=中央社)

 ある裁判官は、刑法の間接毀損罪で懲役3年が下される可能性があると指摘。弁護士は、コストコの返品システムを悪用し、購入意図がないのに購入、すぐ開封して返品すれば、故意に他人に損害を与える間接毀損罪に当たり、損賠賠償を請求される可能性があると説明した。

販売半減、従業員に不安感

 味全の蘇守斌執行長は、頂新集団の無罪判決後、「林鳳営」の販売量は半減し、従業員の士気も下がったと指摘。同時に、同社株式の40%を頂新集団が保有しているのは事実だが、残り60%を保有する数万人の投資家、3,000人以上の従業員とその家族、酪農家など提携パートナー、消費者などステークホルダー(利害関係者)も苦しい思いをしていると強調。その上で、社会の不安や誤解、批判を同社の改善、進歩につなげ、食品安全管理をさらに徹底すると表明した。味全は今後3年以内に、台中、雲林県斗六、高雄、桃園市龍潭の工場をアップグレードするほか、食品安全関連検査に毎年20億~30億元を投じる計画だ。

 味全は今年第3四半期損失が5億8,100万元と、昨年第4四半期の損失6億1,900万元に次ぐ、過去2番目の赤字だった。11月売上高は15億4,900万元で前月比12.2%減少した。

 ある味全の従業員は、このままでは頂新集団より先に味全がつぶされてしまうと不安の声を漏らした。

飼料油の証明、二審の焦点に

 彰化地検は台中高等法院への上訴で145ページに上る訴状を提出し、▽頂新集団の原料輸入先、ベトナムのダイハインフック(大幸福)社はベトナム政府に飼料用メーカーと認定されている▽頂新集団が調達した油脂とベトナムで検査のため提出したサンプルは異なる▽ダイハインフックの油脂には重金属が含まれ、人体の健康を害する──などと指摘した。頂新集団が購入したのは飼料油だったと検察が証明できるかが二審の焦点となりそうだ。