ニュース 電子 作成日:2015年12月14日_記事番号:T00060948
中国の国有半導体大手、紫光集団は11日、半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)台湾2位の矽品精密工業(SPIL)に568億台湾元(約2,100億円)を出資して、株式24.9%を取得すると発表した。出資比率は業界最大手の日月光半導体製造(ASE)を上回り筆頭株主となる。紫光集団はまた、台湾4位の南茂科技(チップモス・テクノロジーズ)の株式25%も取得して2位株主となると発表。10月には、半導体メモリーの封止・検査大手、力成科技(パワーテック・テクノロジー、PTI)にも25%出資を表明しており、矢継ぎ早の出資攻勢は驚きと警戒感をもって受け止められている。14日付経済日報などが報じた。
紫光集団の出資受け入れはSPILによるASE対抗策とみられているが、林董事長は「紫光集団とは今年5月から交渉してきた」と説明した
(11日=中央社)
紫光集団とSPILは同日、SPILの第三者割当増資を紫光集団が引き受け、1株当たり55元でSPIL株10億3,300万株を取得する協定を交わした。SPIL株の11日終値計算でプレミアム(上乗せ)は20.8%。紫光集団は出資後、SPILに董事を1人派遣する。
SPILの現在の筆頭株主は25%を出資するASEだが、SPILの増資で出資比率が18.7%へと33%希薄化され、2位株主に後退する。
「中国市場は無視できない」
SPILの林文伯(バウ・リン)董事長は、紫光集団と戦略提携を結ぶことにより既存の顧客基盤を固められるほか、紫光集団傘下の半導体メーカーに封止・検査サービスを提供できると説明。紫光集団は世界半導体市場の開拓を進めており、SPILが中国を含めた世界市場で展開する上で非常にプラスだと強調した。
林董事長はまた、紫光集団の出資でSPILが受けるメリットとして▽経営規模の拡大▽先進製造プロセス研究開発(R&D)への投資▽ハイエンド封止・検査の生産能力拡充とコア・コンピタンス(中核的競争能力)強化──を挙げた。調達資金は主に中部科学工業園区(中科)工場の生産拡大とシステム・イン・パッケージ(SiP)のライン設置などに充てる計画だ。
林董事長はさらに、台湾の半導体産業は世界の顧客と市場を取り込むことで長年成長してきたと説明。ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)も南京市への12インチウエハー工場設置申請を行っており、世界最大の半導体市場となった中国は無視できないと強調した。
SPILは受注の25%が中国顧客で、蘇州工場(江蘇省)の売上高は同社全体の12%を占める。SPILは「中国と提携しなければ世界から取り残される」と指摘した。
チップモス「中台シェア拡大へ」
紫光集団はチップモスの第三者割当増資も引き受け、1株40元でチップモスの株式2億9,900万株を取得する。チップモス株の11日終値計算でプレミアムは24.4%。紫光集団は出資後、チップモスにも董事を1人派遣する。
チップモスの鄭世杰董事長は、TSMC、聯華電子(UMC)、力晶科技(パワー チップ・テクノロジー)の中国12インチ工場が稼働すれば、現地で封止・検査を受注できると期待感を示した。
SPILとチップモスは来年1月28日に臨時株主総会を開き、増資に伴う定款変更議案などの承認を目指す。その後、紫光集団は台湾の経済部に投資計画書を申請。審査は早ければ来年上半期にも完了する予定だ。
1社のみ審査合格か
鄧振中経済部長は12日、紫光集団による、パワーテックを含む3社に対する出資計画を、最も厳格に一括審査すると表明した。
3社の世界シェアは計17.4%でASEの18.6%に迫る。出資元が紫光集団に集中することは台湾の半導体産業の発展に影響するとの懸念も浮上しており、経済部投資審議委員会(投審会)の張銘斌執行秘書は「3件全てが審査に通る可能性は非常に低い」と指摘した。14日付工商時報は「1社への出資のみが認可される」との見方を示した。
IC設計への出資解禁後れも
民進党議員団の柯建銘総召集人は12日、紫光集団による3社への出資は国家の安全保障に関わる問題で、審査は新政権に委ねるべきだと述べた。国民党の頼士葆政策会執行長も「同出資計画は社会的印象が悪い」と述べ、経済部は既に計画を阻止する構えだと明かした。
鄧経済部長はまた、社会の注目度が高いため、紫光集団の出資計画と、中国資本による台湾IC設計産業への投資解禁の是非を合わせて考慮する方針を表明した。業界では、中国資本に対する台湾IC設計産業への投資解禁が遅れたり、解禁路線自体が変わる可能性もあるとの見方が浮上した。
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