ニュース 電子 作成日:2015年12月15日_記事番号:T00060973
半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)台湾2位の矽品精密工業(SPIL)が先週末、中国の国有半導体大手、紫光集団から1株55台湾元(約200円)で24.9%の出資を受け入れると発表したことを受け、今年SPILの筆頭株主となった業界最大手の日月光半導体製造(ASE)は14日、1株55元での完全買収を提案した。買収額は推定40億米ドル。紫光集団の予想を超える「爆買い」に対しては、野党・民進党が紫光集団の投資計画の審査延期を呼び掛けたほか、経済部関係者が中国資本に対し台湾IC設計への投資解禁の延期を示唆するなど、政策方針の見直しに発展しそうだ。15日付経済日報などが報じた。
董ASE財務長(左)は林文伯(バウ・リン)SPIL董事長に対し、今の非常事態を団結して乗り越えようと呼び掛けた(14日=中央社)
ASEは9月に株式公開買付(TOB)でSPIL株24.99%を取得したが、SPILは買収に強く反発し、鴻海精密工業からの出資受け入れ(10月の臨時株主総会で否決)や友好企業との関係強化など、対抗姿勢を見せていた。
ASEの董宏思財務長は同日、SPIL完全買収計画については12月21日までに書面での回答を求めており、完全買収後もSPILの社名を残し、董事など経営陣を留任、全従業員の雇用を保証し、既存の賃金制度や福利厚生制度を残すと説明した。ただ、SPILには紫光集団との協定を撤廃し、株式上場を廃止してもらうと話した。
SPILは、社内で話し合う必要があるとしてコメントを控えた。
業界では、SPILはASEの子会社に成り下がれば、経営に口を挟まれる可能性があるので、完全買収の提案を退けるとみられている。
安全保障に危惧
紫光集団は11日、SPILのほか、台湾4位の南茂科技(チップモス・テクノロジーズ)に対して25%出資すると発表したほか、10月に半導体メモリーの封止・検査大手、力成科技(パワーテック・テクノロジー、PTI)の株式25%取得も表明しており、台湾の封止・検査大手3社に合計882億台湾元(約3,200億円)をつぎ込む構えだ。
民進党の林全シンクタンク執行長(元財政部長)は、市民感情を考慮し、現政権下で紫光集団の投資計画を進めるべきでないとの考えを示した。中国資本による台湾企業の買収は、▽企業の発展▽業界の発展▽国家の安全保障に懸念はないか──の3点を検討すべきと指摘。例として、紫光集団が7月に米マイクロン・テクノロジーに買収を提案したが、米国政府は安全保障上の影響を危惧(きぐ)し、実現していないことを挙げた。また、台湾IC産業はこれまで自前のサプライチェーン構築で競争力を維持しており、今後は政府と企業が方向性を一致させ、プラスにならない買収は阻止すべきと訴えた。
IC設計投資解禁に不透明感
国民党の朱立倫主席も、紫光集団の台湾3社に対する投資計画に反対する考えを表明したほか、現政権の中国資本に対する台湾IC設計への投資解禁方針に対しても、「今はその時機でない」と述べた。
経済部工業局は、台湾のIC設計産業の生産額は世界市場シェア18.9%と米国に次ぐ世界2位で、海外大手が中国と提携する中、台湾経済発展のため中国の市場とサプライチェーンを有効利用すべきとの意見を発表した。
ただ経済部内部でも、中国政府による地場産業支援で勢力を増している「紅色供給網(レッドサプライチェーン)」に入り込み、中国市場の商機を狙うべきとする賛成意見と、IC設計は従来型産業と異なり、従業員の頭の中に価値が詰まっており、中国資本に人材を奪われてしまうとの反対意見がある。
台湾大学、政治大学、交通大学の情報工学、電機関係学部の教授は、開放すれば技術や人材が流出するとして反対を表明した。さらに与野党の総統候補3人に対し、反対署名活動への参加を呼び掛けた。成功大学電機系の張順志教授は、中国企業が巨大市場を餌に台湾投資を開放するよう迫っているが、台湾企業の技術や経営権が奪われ、台湾の競争力が失われると訴えた。
台湾区電機電子工業同業公会(電電公会、TEEMA)の羅懐家秘書長は、よく協議して総統選挙後に決定した方がよいと述べた。IC設計大手の聯発科技(メディアテック)など大部分の台湾企業にとって中国は最大の市場で、中国資本の出資を断りにくく、政府は技術流出を防ぐ措置を講じるべきだと語った。
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