ニュース 電子 作成日:2015年12月23日_記事番号:T00061131
半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)最大手、日月光半導体製造(ASE)は22日、来週29日から矽品精密工業(SPIL)に対する2度目の株式公開買付(TOB)を実施し、出資比率を49.71%に引き上げると発表した。取得額は423億5,000万台湾元(約1,560億円)を見込む。さらにSPILに対し、来年1月28日の臨時株主総会までに中国の国有半導体大手、紫光集団を引受先とする第三者割当増資の計画を撤回しなければ、100%の株式取得に向けた行動に移ると表明した。ASEは世界首位の座を固めるため、何としてもSPILを買収する意志が明確だ。23日付経済日報などが報じた。
董ASE財務長(左)は、SPIL完全子会社化は既定路線だと語った(22日=中央社)
ASEは、29日から来年2月16日まで1株55元で株式24.71%を取得する計画だ。ASEは8月下旬~9月末に1株45元でSPIL株24.99%を取得しており、2回のTOBを通じて計775億5,000万元を投じることになる。董宏思ASE財務長は、SPILの買収防衛策は増資による株式の希薄化を伴うため、2度目のTOBを決定したと説明した。
ASEは、SPILが紫光集団からの出資受け入れ計画を撤回し、ASEと董事会のメンバー変更について話し合わないのであれば、ASEがSPIL株を保有して満1年となる来年10月1日にも臨時株主総会を開催、董事監事の改選で過半数を獲得してSPIL株主との株式交換を提案し、SPILを完全子会社とする考えだ。董財務長は、完全子会社化とした場合、SPIL株は上場を廃止すると述べた。
紫光集団の25%出資計画は、中国の「紅色供給網(レッドサプライチェーン)」に対する警戒感から与野党の立法委員が認可見合わせを求めており、SPILの買収防衛策は暗礁に乗り上げている。
外資は売却見通し
SPILは同日、来週28日に董事会でASEによる完全買収の提案について話し合う前に、敵対的買収を仕掛けられ、対話の土台が壊されたと不快感を示した。1株55元は価格設定に根拠がなく、わずか3カ月前に1株45元で売却した投資家の権益を損ねるとして、元株主に対しASEへの損害賠償を請求するよう呼び掛けた。
SPILは、ASEは巨額の資金を動かすのに計画性がなく、株主の権益を蔑ろにし、コーポレートガバナンス(企業統治)が効いていないと指摘した。もし半導体封止・検査の大手2社が結び付けば、市場の秩序が崩壊し、競争が働かず、顧客の受注が台湾以外に流出する恐れがあるとも訴えた。
SPIL株の54.23%は外国人投資家が保有している。市場アナリストは、TOB価格が低くなく、買収合意の可能性もあり、外国人投資家の大部分がASEにSPIL株を売却すると予測した。元大証券投資顧問、モルガン・スタンレー、ドイツ証券、野村證券、ゴールドマン・サックス、マッコーリーの大手6社はいずれもASEの戦略を有望視している。
元大証券投資顧問の陳治宇・半導体産業アナリストは、交渉が長引けば長引くほど、ASEのSPIL買収コストは高まると指摘した。ただ、買収が成功すれば、大手2社の水平統合で、顧客との価格交渉力が高まり、平均販売価格(ASP)、粗利益率が上昇するため、ASEの自己資本利益率(ROE)にプラスだと予測した。
「反トラスト法違反の懸念なし」
ASEは世界最大手で、IDM(垂直統合型の半導体メーカー)の半導体封止・検査の生産能力を除いた場合、市場シェアは18.6%だ。SPILは9.3%のため、合計30%近く、各国・地域の反トラスト法(独占禁止法に相当)に違反する可能性が市場で懸念されている。これについて董ASE財務長は22日、IDMを合わせれば、世界市場シェアはASEとSPILを合わせても10%に届かないので、違法でないと話した。
公平交易委員会(公平会、公正取引委員会に相当)の邱永和副主任委員は同日、公平交易法(公正取引法)で、3分の1の議決権を取得する場合は事後報告が必要と述べた。また、一方の市場シェアが4分の1以上、または結合後の市場シェアが3分の1以上となる場合は、届け出が必要と説明した。ASEにその旨を伝えたが、22日までに届け出はないと話した。
弁護士は、公平交易法に接触する疑いがあれば、念のために買収前に公平会に審査を依頼する企業が多いと語った。
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