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中国人旅客の台湾乗り継ぎ解禁、今月中にも実現へ


ニュース 運輸 作成日:2016年1月6日_記事番号:T00061320

中国人旅客の台湾乗り継ぎ解禁、今月中にも実現へ

 中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)は5日、中国人旅客の台湾での航空機乗り継ぎを試験的に認め、第1弾として江西省南昌、重慶、雲南省昆明の3市から桃園国際空港を経由して第三国へ乗り継げるようにすると発表した。今月中にも実現する見通しだ。試験開放で台湾側は米国などに向かう中国人旅客を年間延べ18万人取り込め、航空会社や旅行会社、空港の免税店などが恩恵を受ける見通しだ。6日付経済日報などが報じた。


中国人旅客の台湾乗り継ぎ解禁は、桃園空港が「アジア太平洋のハブ空港」という目標に近づく上で重要なポイントだ(5日=中央社)

 現在、中国人の台湾渡航には、中国側の旅券に相当する「大陸居民往来台湾通行証」(通称・大通証)と台湾側のビザに相当する「台湾地区入出境許可証」(入台証)を取得する必要があるが、試験開放する3市からは旅券と桃園空港行きの搭乗券、乗り継ぎ搭乗券さえあれば台湾を経由した第三国への乗り継ぎが可能となる。今回の解禁措置では対象を3市の戸籍保有者に限っていないため、市外の住民も乗り継ぎできる。

 中国人旅客の台湾での航空機乗り継ぎをめぐっては、台湾の対中窓口機関である海峡交流基金会(海基会)と中国側の海峡両岸関係協会(海協会)が2014年2月の会合で初めて議題に挙げたが、中国側が要求した台湾海峡中間線をまたぐ直線ルートの開放を台湾側が「安全保障に関わる」と拒否したことから、これまで交渉に進展が見られなかった。しかし、昨年11月の中台首脳会談で馬英九総統が習近平中国国家主席に早期実現を要求したことを受け、中国側が今回、無条件で容認した。なお3市は中国側が経済効果を考慮して選んだとされる。

 海基会と海協会は近く会合を開き、補完措置などについて再度確認する。政府関係者によると、乗り継ぎ実施に向けた詳細は協議済みで、中国側の関係者が既に桃園空港での移動経路も実地調査しており、準備作業は簡単な部分を残すのみだという。

 台湾の行政院大陸委員会(陸委会)は5日、「中国側の譲歩は喜ばしい。試験開放で双方が経験を積んでから、中国人旅客の台湾乗り継ぎ全面解禁を迅速に進めたい」との声明を発表した。

航空大手2社は歓迎

 重慶市の人口は約3,000万人、四川省周辺は約1億人、昆明市、南昌市も500万人以上の人口を抱える。3市から桃園空港には中台6社が週20便運航しており、内訳は▽重慶〜桃園、長栄航空(エバー航空)傘下の立栄航空(ユニー航空)が週2便・中国国際航空(エアチャイナ)が週5便▽昆明〜桃園、中国東方航空(チャイナ・イースタン・エアラインズ)と四川航空が週3便ずつ▽南昌〜桃園、中華航空が週3便・中国東方航空が週3便・深圳航空が週1便──。同20便の輸送能力は月平均3万席。重慶〜桃園、昆明〜桃園の平均搭乗率は83%、南昌〜桃園は76%。

 中華航空は、乗り継ぎ解禁で北米、東南アジア、ニュージーランド、オーストラリアへのトランジット需要を取り込めると期待感を示した。エバー航空は、3市からの乗り継ぎ便を増やしたいと表明した。

全面解禁で商機100億元

 米商務省の統計によると、14年の訪米中国人旅客は延べ182万人で、うち60%が香港、ソウル、東京などから乗り継ぎ便を利用した。交通部民用航空局(民航局)は、中国人旅客の台湾乗り継ぎが全面解禁されれば、米国への乗り継ぎ客を年間延べ40万〜80万人取り込め、1人当たりの平均運賃3万台湾元(約10万7,000円)で計算すれば、台湾の航空会社に年間100億元以上の増収効果をもたらすと試算している。

総統選前の政治的判断か

 なお台湾の総統選を直前に控えたタイミングでの乗り継ぎ解禁に対し、与党国民党による「票稼ぎ」との意見も出ている。陸委会関係者も、第1弾開放都市を3市にとどめたことから、中国側が総統選をにらんで「中台関係を今後も前に進めるべき」とのメッセージを放ったとの見方を示している。国台弁の解禁発表後、馬総統も「次期総統は中台の平和と繁栄を大事にしてほしい」とのコメントを発表しており、民進党の蔡英文主席の対中政策を改めてけん制したものとみられる。