総統選投票日前の最後の日曜日となった16日、与野党は台湾全土で大規模なイベントを繰り広げて支持を訴えた。民進党が台湾のほぼ全土を行進とハイタッチでつなぐイベントを成功させれば、国民党も各地の集会に大勢の支持者を集めた。民進党の謝長廷候補が「『一つの中国市場』反対」などの主張を浸透させ、国民党の馬英九候補を猛追する展開となっている。
オープンカーから声援に応える謝長廷候補。支持者の盛り上がりに満足げだ(16日=YSN)
民進党支持者たちの、こんなに晴れやかな笑顔を見るのはいつ以来だろうか──。そう、4年前の2月28日、中国のミサイル配備に反対して200万人が基隆から屏東まで手と手をつないだ「人間の鎖」の時以来だ。
民進党の終盤戦のスローガンは「逆転勝ち」だ。台北市でのイベント拠点とした国父紀念館は数万人の支持者であふれ、中国が3年前に反国家分裂法を採択した3月14日に合わせ、3時14分にかぶっていた帽子を後ろに回して「逆転」させ、周囲の参加者と「逆転勝ち!」と連呼しながらハイタッチをして気勢を上げた。
この後、支持者らは仁愛路をデモ行進。沿道の支持者たちと「逆転勝ち!」と声を掛け合いながらハイタッチを繰り返した。
ハイタッチで謝候補支持の連帯感を確かめ合う
(16日=YSN)
国民党公約の両岸共同市場を、「やがては中台統一に導く『一つの中国市場』」と厳しく批判する演説を行った謝候補は、国父紀念館から台北県板橋市の同県競選総部(選挙対策本部)までオープンカーで移動した。沿道に繰り出した大勢の支持者の波は台北県境まで全く途切れることはなく、まさに「人間の鎖」をほうふつとさせた。
台湾人は日ごろの激しい政治対立から、職場などの公的生活では政治に関する話をできるだけ避けるのが普通だ。そんな台湾人たちが思う存分に台湾アイデンティティを表明する時の笑顔と笑顔。それが、「人間の鎖」の時の一体感を思い出したことを物語っていた。
民進党は大規模イベントの成功を「逆転勝ち」のための極めて重要な要素と位置付けていたが、この日の支持者たちの盛り上がりを見るに、その目的は十分達成したと思われる。
17日付中国時報によると、民進党は野党の支持基盤である北部、1月の立法委員選挙で著しい退潮に見舞われた中部を重点戦略地域としている。これは、支持基盤の南部は票の伸びしろに限界がある一方、北部や中部は開拓余地が大きいためだ。同党は北部の負けを少なくし、中部で互角、南部の大幅リードで勝利する、という戦略を描いている。
国民党、危機感強める
一方、国民党も台北市をはじめとした25県市で集会などのイベントを行った。各メディアによると、夜の台南市での集会に、同地では過去最高の3万人の支持者が集まり、昼の台中市でのイベントにも同党の予想を上回る支持者が集まったという。
国民党の4人の立法委員が民進党選対本部に乱入した不祥事、李登輝前総統の謝候補に対する事実上の支持表明、中国のチベット弾圧など、同党の選挙情勢にとって好ましくない事態が続いており、支持者の間で危機感が高まっているという。民進党の集会は自発的な参加者が多い一方、国民党は動員されて来る人が多い。そうした国民党の集会に多くの支持者が集まる時は、過去の選挙の例では強いことが多い。
投票日まであと5日となった。イベントに集まる本来の支持者以外に、投票する候補者がまだ固まっていない中間層にいかに支持を拡大していくかが、台湾の進路を決定する今回の選挙における、勝敗の重要な分かれ目になるとみられる。
台北県中和市で開かれた集会で、馬英九候補に声援を送る支持者たち。今回は台湾アイデンティティーを強く訴える戦略で支持拡大に成功している(15日=YSN)