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急速な中台接近拒否、統一地方選の流れ変わらず


ニュース 政治 作成日:2016年1月17日_記事番号:T00061528

急速な中台接近拒否、統一地方選の流れ変わらず

 総統・立法委員選の結果は、一昨年の統一地方選挙の流れを引き継いで、若い層を中心に台湾意識を強める有権者が、昨年11月の中台首脳会談など、中台の急速な接近を推進した馬英九政権に改めて拒否を突き付けたものとなった。

 1期目で直航や中国人観光客の訪台開放など中台間の経済開放を推進した馬政権は、2期目では中国との政治接近を図り有権者の反発を招いた。一方、地価高騰や低賃金問題など、市民にとっての切実な問題を解決できず失望感が広がった。

 こうした中、一昨年春のヒマワリ学生運動が対中傾斜反対を強く表明して世論の雰囲気を変え、統一地方選での国民党惨敗を導き、今回の総統・立法委員選でもその流れが変わることはなかった。安定した中台関係は、確かに台湾の民意の柱の一つだが、馬政権はそれに依存し過ぎた嫌いがある。

若者層が先導役に

 自由時報が今月行った総統選前最後の支持率調査によると、20~29歳の有権者層による候補者支持率は、蔡英文氏54.62%、宋楚瑜氏13.85%、朱立倫氏4.62%で、蔡氏への支持が際立っていた。こうした若者たちは、社会の台湾化が進んだ李登輝政権と陳水扁政権の時代に人格形成を遂げており、同時に低賃金に悩む「奪われた世代」でもある。

 ヒマワリ学生運動の流れを組む時代力量が「分配の公平」を掲げて躍進を遂げた現象に見られるように、今回は外省人対本省人の構図を引き継ぐ「青(国民党陣営)対緑(民進党陣営)」の対立に、台湾意識が強く、社会的不公正に憤る若者層が割って入り、中国寄りの与党を引きずり下ろす先導役になったとみられる。

 一方、蔡氏は中台関係の「現状維持」を掲げたことで、台湾海峡の不安定化を嫌う幅広い層をうまく取り込めたとみられる。対中関係のあいまいさは前回12年では落選の原因となったが、今回は国民党からたびたび批判を受けても支持率には全く影響しなかった。

 民進党政権は初めて多数与党として政権運営に当たることになり、年金などの財政改革、地価高騰・低賃金の台湾域内経済問題、中台関係の安定と台湾独自の主体性維持、実力を伸ばす紅色供給網(レッドサプライチェーン)への対応、エネルギー対策、国際社会での生存空間維持など、困難な課題に立ち向かうことになる。台湾の新たな道をどのように切り開いていくのか蔡氏の手腕が注目される。

【図】【表】