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中台経済交流に早くも懸念、「IC設計開放・AIIB加入が困難に」


ニュース その他分野 作成日:2016年1月18日_記事番号:T00061554

中台経済交流に早くも懸念、「IC設計開放・AIIB加入が困難に」

 民進党蔡英文主席が総統選挙に当選したことを受け、早くも中台間の経済交流に懸念が浮上している。半導体業界では、中国資本に対する台湾IC設計業界の投資開放は実現しないとの見方が出された。また中国主導で先週開業したアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも、蔡政権は主権問題から参加を見送るとの観測が浮上している。18日付経済日報などが報じた。


AIIBの金初代総裁。中国はこれまで馬英九政権に対し、台湾の加入を歓迎する意向を示していた(17日=中央社)

蔡主席「脅威が非常に大きい」

 台湾IC設計業界の投資開放をめぐっては、国民党の朱立倫主席も反対を表明し、立法院では昨年12月中旬、反対決議が行われていた。しかし、当時は選挙前に有権者に向けて中国に強い態度を見せることが意図で、国民党政権が継続していた場合、中台の半導体業界の現状、台湾半導体業界の意向をみた上で、再び開放を検討する可能性はあった。

 一方、蔡主席は昨年12月、中国・紫光集団が台湾IC設計業への出資意向を示したことに対し、「台湾産業への脅威が非常に大きく、世論の不安も強いため、懸念が払拭(ふっしょく)されるまでは中国資本にIC設計を開放する余地はない」と述べていた。蔡主席自身が開放に消極的とみられる上、今回の選挙では過度の中国傾斜に反対する世論を背景に当選していることから、政権発足後、少なくとも当分の間、IC設計の投資開放が実現する可能性は低いとみられる。

 こうした観測について、昨年、紫光集団が買収意欲を示した台湾最大手の聯発科技(メディアテック)は17日、世界を視野に中台が提携する上で、開放を促す立場に変わりはないと強調した。

 なお、ある業者は、今後も中国資本に対してIC設計を開放しない可能性はあるが、既に多くの企業が中国に子会社を設立しており、そこでは中国資本の出資を際限なく受けられると明かした。

見送りにはデメリットも

 台湾経済研究院(台経院)の劉佩真副研究員は、中国資本に対しIC設計投資を解禁しなければ、IC設計業界の価格競争がさらに激化し、台湾の業者がハイエンド技術を開発しにくくなるとデメリットを指摘。メディアテックと紫光集団傘下の展訊通信(スプレッドトラム・コミュニケーションズ)が提携すれば、共同でクアルコムに対抗できるが、提携できなければメディアテックは価格競争から抜け出せないと述べた。

 また、紫光集団による、▽力成科技(パワーテック・テクノロジー、PTI)▽矽品精密工業(SPIL)▽南茂科技(チップモス・テクノロジーズ)──の台湾パッケージング・テスティング(封止・検査)3社への出資計画も当面認可されないとみられる。経済日報は、封止・検査3社は紫光集団との資本提携により中国での受注増を狙っていたが、計画が頓挫すれば見込めなくなり、台湾封止・検査産業の発展に不利だと指摘した。

意図的な挑発か

 AIIBの金立群初代総裁は17日の記者会見で、「台湾の加入を歓迎するか」との質問に対し、「主権を持たない、あるいは自身の国際関係の活動に対し責任を負えない申請者は、その国際関係の活動に対し責任を負うAIIBメンバーの同意、あるいはその申請者に代わってAIIBに加入申請を提出する」とする協定第3条第3項を引用した。

 これを受け台湾の行政院大陸委員会(陸委会)は、台湾政府は以前から同条文を台湾のAIIB加入申請に適用できないと表明しており、台湾の尊厳と権益を傷つけることは受け入れられないと批判した。中国側は台湾の総統・立法委員選の結果を受けて、同条文を持ち出してきたともみられる。蔡新政権の出方が台湾のAIIB加入動向を占うことになるが、台湾の主権をとりわけ重視する蔡主席が同条文を受け入れる可能性はゼロに等しく、中国側がこれに固執する場合、台湾のAIIB加入も進展しない公算が大だ。