ニュース 商業・サービス 作成日:2016年1月22日_記事番号:T00061660
観光業界の対中窓口機関、台湾海峡両岸観光旅遊協会(台旅会)は、中国人の訪台ツアー客を3月20日から6月30日までの間、3分の1削減するという通知が、総統選後の18日以降、台湾の旅行会社に中国同業から相次いで伝えられていると明らかにした。住民に台湾自由旅行を許可する対象都市も現在の47都市から4都市へと大幅に減らすとみられ、事実となれば台湾の航空会社やホテルなど観光業界が打撃を受けることになる。22日付経済日報が報じた。
2008年に中国人による台湾観光が解禁されて以降、訪台中国人客は同年の延べ約33万人から昨年の430万人へと13倍に増加。うち自由旅行者は130万人だった。馬英九政権が「1992年の共通認識(92共識)」を基盤に中国と経済交流を進めてきた成果と言えるが、92共識を認めない民進党の蔡英文主席が総統選で当選すれば、中国が民進党政権を締め付けるために訪台中国人客を削減するとの観測は早くから浮上していた。
台旅会によると、中国は訪台中国人ツアー客に開放している1日当たり5,000人の割り当て枠を3分の1減らすほか、住民に台湾自由旅行を認める開放都市も北京、上海、広州、アモイの4都市のみとする方針を一方的に決めたとされる。
台旅会上海弁事処の李嘉斌主任は、同会も関連業者も正式な通知は受け取っていないと指摘し、中国側の海峡両岸旅遊交流協会(海旅会)を通じて確認中だと説明した。
中国では訪台ツアーや自由旅行の割り当て枠は中国国際旅行社など国営の大手旅行会社が握っており、中国や台湾の旅行会社が業務を請け負っている。上海錦江旅遊などは、上海や周辺都市での訪台ツアー客の出境申請は現在正常だが、問題の政策が実施されれば、それに合わせて訪台ツアー客数を調整することになると説明した。
「過度の動揺は不利」
旅行業界団体、台北市旅行商業同業公会(TATA)の柯牧洲副理事長は、訪台中国人が減少すれば、台湾のホテル、飲食店、ギフトショップなどが比較的大きな打撃を受けると指摘。一方で旅行関連業者に対し、過度の動揺を見せれば蔡新政権が中国人旅客に対する依存度を下げようとする上で不利になるとして、冷静な対応を呼び掛けた。
ホテルの供給過剰悪化も
なお交通部観光局が21日発表した統計によると、台湾の観光ホテル全体の昨年の客室稼働率は69.3%で前年比3ポイント下落した。1日1室当たり客室売上高(RevPAR)は2,641台湾元(約9,200円)で、32元の減少となった。減少は10年以降で初めて。経営効率悪化の背景にはホテルの供給過剰がある。昨年の訪台外国人旅行者は前年比1%増加して延べ1,000万人を突破したが、宿泊業の総客室数は昨年末に20万5,000室へと7.3%増えており、増加ペースは供給が需要を大きく上回っている。こうした中で訪台中国人客が減少すれば、ホテルの供給過剰はさらに深刻さを増し、業績への悪影響が懸念される。
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