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米国が中国冷延鋼を締め出し、CSCに商機到来


ニュース 鉄鋼・金属 作成日:2016年3月3日_記事番号:T00062294

米国が中国冷延鋼を締め出し、CSCに商機到来

 米国商務省が1日、中国をはじめ7カ国・地域の冷延鋼板メーカーに対し最高265.79%のアンチダンピング(AD、不当廉売)関税措置を適用する仮決定を下した。中国鋼鉄(CSC)は、中国メーカーは政府補助金の相殺関税(CVD)280%も課され、合計550%近い重税で米国市場から締め出され、台湾メーカーに有利に働くと指摘した。CSCは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加盟国のベトナム工場からゼロ関税で米国に輸出することも視野に入る。3日付経済日報などが報じた。

 米国は中国に265.79%、▽ブラジル▽インド▽韓国▽ロシア▽日本▽英国──に2.17~71.35%の反ダンピング関税を暫定的に適用する。来週14日から実施し、5月末にも最終決定が出る見通しだ。冷延鋼板は、家電製品、自動車部品、輸送用コンテナ、工業や建設に使用される。

 CSCの劉李剛業務副総経理は、現在、同社の冷延鋼板の1トン当たり価格は、米国市場の相場よりも100米ドル以上低く、輸送費などコストを加えたとしても魅力があると語った。傘下の貿易会社、中貿国際(CSGT)が既に米国市場の調査を開始していると話した。

 米国市場の冷延鋼板の相場は1トン当たり620米ドルで、CSCの台湾域内価格は450米ドルだ。CSCの冷延鋼製品は現在、中国、東南アジア、日本などが主要輸出先である一方、米国にはほぼ輸出していない。CSCが56%出資し、新日鉄住金などと合弁したベトナムのCSVC(中国語名・中鋼住金越南)は、冷延鋼板の年産能力が120万トン。当初計画ではベトナム内需市場をターゲットに据えたが、米国による中国メーカーへの重税で、対米輸出の可能性が浮上した。

 CSC傘下の中鴻鋼鉄も、現在は米国に冷延鋼板を輸出していないが、今後、米国市場開拓のチャンスがあると意欲を示した。

 両社のほか、▽燁輝企業(YP)▽裕鉄企業(PT)▽盛餘(SYSCO、センユースチール)──の輸出拡大が見込まれる。

中国からの輸入量48万トン

 米国商務省によると、昨年の中国からの冷延鋼板の輸入量は48万2,211トンで、平均価格は1トン当たり624.5米ドルだった。

 米国の鉄鋼生産量は年間8,000万トンで、1億1,000万トンを輸入している。貿易会社は、中国からの輸入量は7番目にすぎないが、オファー価格が市場価格より2~5割安いので、米国メーカーが太刀打ちできないでいたと指摘した。

 昨年は熱延鋼板の価格が35%低下し、1トン当たり400米ドルを割り込んだほか、熱延鋼板を加工する冷延鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板のオファー価格も押し下げられた。世界最大手のアルセロール・ミッタルが80億米ドル近く、USスチールが15億米ドルの赤字に陥ったため、共に米国で従業員を解雇し、ダンピング調査を要請した。

 一方、鉄鋼専門の市場調査会社、ワールド・スチール・ダイナミクス(WSD)は、中国の昨年の鉄鋼輸出量は1億1,000万トンに上ったが、世界からの圧力を受けて今年は7,500万トンまで低減する見通しで、世界市場で需給が改善、価格が上昇するとの予測を示した。 

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