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「経済交流進展は段階的なものに」            =伊藤信悟・みずほ総研アジア調査部上席研究員


ニュース 政治 作成日:2008年3月23日_記事番号:T00006290

「経済交流進展は段階的なものに」            =伊藤信悟・みずほ総研アジア調査部上席研究員

 
 馬候補の当選による、中台間の経済交流進展への期待は高いとみられる。ワイズニュースで「台湾経済、潮流を読む」を連載中(現在は一時休載)の伊藤信悟みずほ総研上席研究員は、経済交流は台湾内部のコンセンサスを経ての段階的なものになると予想する。
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みずほ総合研究所アジア調査部
 伊藤信悟 上席研究員

──馬英九候補の当選には、近年の中台の経済関係の密接化が背景になったと考えられますか?

 実際には「よく分からない」というのが本音だが、少なくとも有権者が中台関係の安定を望んだ結果と言うことはできる。経済関係が拡大すれば、産業の空洞化や失業を引き起こす可能性があり、そのために中南部では民進党の票の一定の巻き返しがあった。

──両岸共同市場の推進にはどのような課題がありますか?

 労働集約型産業や農業など、両岸市場の拡大で不利益を被ると考える人が存在する。そうした人たちの懸念をできる限り少なくする、つまりコンセンサスを取った上で段階的に進めないと反対運動やデモが起こる可能性がある。

 台湾企業の中国投資規制の緩和に関しては、純資産の40%という資金上限の撤廃よりも、重要技術が流出しないよう制限することの方が重要だと思われる。

──中国人観光客の台湾渡航の拡大や、中国資本の不動産市場投資の開放は、台湾経済にとってどの程度プラスになりますか?

 観光客については、プラスはプラスだが限定的なものになる。一気に開放すると反発が強く出るため、段階的に進めていくことになる。

 不動産投資については、投機目的での出資が多いと、住宅価格が上がるというマイナス面がある。実際、中国で行われたアンケート調査でも、投機目的が1位という結果が出ている。今回の選挙の争点は、単純な経済の活性化というより、生活の質の改善だったと考えられることからも、段階的な開放にならざるを得ないのではないか。

──「一つの中国」をめぐる中台の解釈の違いが、今後の経済交流の障壁となる可能性はありますか?

 台湾の銀行が、中国で自己資金100%で進出する場合や、他国の企業と契約を結ぶ際にどのような名義で行うのか、また、台湾が他国と自由貿易協定(FTA)を結ぶ際に中国が認めるのかどうかなどが、長期的な課題として存在するだろう。



伊藤信悟 みずほ総研上席主任研究員

93年東京大学卒業後、富士総合研究所入社。01年12月~03年11月、(財)台湾経済研究院副研究員を兼務し台北駐在。02年10月、みずほフィナンシャルグループ統合に伴い、現職。現在に至る。近著に「BRICsの成長持続の条件」(みずほ総合研究所『BRICs』東洋経済新報社、06年)など