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ASEのSPIL買収計画、審査中止で一段落


ニュース 電子 作成日:2016年3月24日_記事番号:T00063167

ASEのSPIL買収計画、審査中止で一段落

 公平交易委員会(公平会、公正取引委員会に相当)は23日、半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)最大手、日月光半導体製造(ASE)による矽品精密工業(SPIL)に対する第2次株式公開買付(TOB)の企業結合審査を中止すると発表した。金融監督管理委員会(金管会)の王儷玲主任委員は同日、ASEは今後1年間SPILに対するTOBを申請できないと説明した。ただASEは、持ち株会社を設立して両社を傘下に収める構想があり、新計画ならば公平会に再申請が可能だ。両社の攻防戦はまだまだ続きそうだ。24日付蘋果日報などが報じた。

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 公平会は同日、毎週水曜日の定例委員会を開催。公平会は、ASEは昨年12月に、TOBでSPILに対する出資比率を49.71%まで高め、董事会(取締役会)の過半数の議席を獲得した後、株式交換でSPILの全株式を取得し、子会社化する計画を提出していたと説明。TOB成立には▽5%超の株式取得▽公平会が企業結合を禁止しないことの確認──が必要だったが、TOB期限の3月17日を迎えたため、今回の企業結合は成立しないとして審議中止を発表した。その上で公平会は、ASEは前回の申請と異なる企業結合計画であれば再申請ができると説明した。

 市場関係者は、ASEは持ち株会社を設立して両社を傘下に収める計画を再申請する可能性があると指摘した。このほか、▽ASEがSPIL株主から、公平会による承認が不要である3分の1以下の株式を買い取り、その1年後に臨時株主総会を開催を提案し、董事会の議席を得る。これに対抗するためSPILは自社株を買い占める▽ASEが1年後に第3次TOBを申請する──という可能性を挙げた。ASEは公平会の判断に不服を申し立てることもできるが、認められる確率は低いと指摘した。

ASE、買収意欲変わらず

 SPILは同日、公平会の判断を評価するとコメントした。ASEは、公平会の審議中止は法的根拠に欠けると遺憾の意を示した。国際競争が激化する中、台湾サプライチェーンが永続するため、今後もSPIL全株式の取得を目指すと改めて表明した。

 公平会の審議中止発表を受け、SPIL株価は一時4%以上下落したが、その後買い注文が入り、前日比0.62%下落の48.35台湾元(約170円)で引けた。ASE株の同日終値は0.45%上昇の36.95元だった。ASEによるSPIL株の買取価格55元での売却を目当てに購入した投資家は当てが外れた格好だ。

「ASEは紅色供給網」策が奏功

 ASEは昨年9月の第1次TOBでSPIL株24.9%を取得し筆頭株主に浮上している。ASEによる買収防衛策として、SPILは昨年12月、中国の国有半導体大手、紫光集団からの出資を受け入れると発表したが、中国政府による地場産業支援で勢力を増している「紅色供給網(レッドサプライチェーン)」にのみ込まれると反対世論が巻き起こった。SPILはこれを逆に利用して、ASEやASE大株主は大規模な対中投資を行っている「隠れレッドサプライチェーン」だとメディアを通じて訴え続けたことが、第2次TOBの防衛成功につながったと蘋果日報は分析した。

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