経済振興を最大公約とした国民党の馬英九氏が総統に当選したことで、不動産や自動車、サービスなど、域内各業界から景気のさらなる上昇への期待の声が上がっている。24日は台湾株式市場の加権指数も、寄り付きで先週末比で524.24ポイントの大幅上昇となり、先行きへの期待の高さが示された。一方、今年上半期の物価上昇率は過去13年で最大の3%に達する見通しで、新政権が市民に経済成長の果実を感じさせる上で、真っ先に取り組むべき課題として浮上している。
24日付経済日報によると、最も強気の見通しを立てているのは、外資や台湾企業の投資増を予測している不動産業界で、DTZ(戴徳梁行)の顏炳立総経理は、「高級住宅、オフィスは少なくとも3割上昇し、台北市では間もなく1坪200万台湾元(約661万円)の高級住宅も出現する」と予想を語る。遠雄集団の趙藤雄董事長も、「今年の3割上昇は問題ない」とした上で、「来年、中国との直航が実現し、国民党公約の公共投資『愛台12建設プロジェクト』が着実に実行されれば、不動産価格は3年で2倍になる。経済成長率も6%どころか、アイルランドのように毎年2けた成長を記録して、8年後に1人当たり域内総生産(GDP)は4万米ドルに達するかもしれない」と、今後、飛躍的な経済成長があり得ると高い期待を示す。
こうした不動産業界の鼻息の荒さに対しては、「域内の不動産市場は既に所得と比べて高すぎる水準にあり、供給過剰でもある」(張金鶚政治大学教授)という、バブル化のリスクを指摘する専門家の声もある。
1日生活圏で自動車販売増
馬次期総統は23日の記者会見で、正式就任後、7月1日を目標に中国との間で週末の直航チャーター便就航を目指すことを改めて表明しており、任期の4年間で中台間の航空の利便性が飛躍的に高まることは確実視されている。
台湾賓士汽車(台湾ベンツ)は、直航が実現すれば「両岸一日生活圏」が形成され、中国に進出した台湾企業の経営者が頻繁に中台間を行き来するようになり、台湾で自動車を買い替えるサイクルが短くなって、高級車の売れ行きに貢献すると期待している。
馬次期総統は中国人観光客の台湾観光規制も7月1日をめどに緩和する方針を示したが、和泰汽車では、大勢の中国人が来るようになれば、大型バスなどの需要が膨らむと予想している。
中国人観光客の開放については、サービス業界から期待の声が高い。王品集団の戴勝益董事長は、「4年後には300万人、いや600万人が来台することもあり得る」と語り、新たな市場の拡大を好感している。
公共投資計画の調整も
中台の経済交流拡大による景気上昇への期待が高まる一方で、現在の台湾経済の課題として、24日付蘋果日報が、「馬新政権に優先して対応してほしいことは何か」という市民へのアンケート調査(有効サンプル数619件)を行ったところ、「物価上昇の抑制」という回答が60.74%で圧倒的な1位となった。2位は「選挙で生じた社会的分裂の解消」で17.61%、3位は「中台チャーター便の早期推進」で10.5%、以下は「その他」「分からない」、などとなる。
物価高で経済成長の恩恵が受けられない問題について24日付聯合報は、「新政権の最大の難題になる」と報じた。
蕭万長次期副総統の腹心で経済政策に強い国民党立法委員の李紀珠氏は23日、「原材料、原油価格の上昇のため、『愛台12建設プロジェクト』推進の優先順位の調整を検討しなければならない」と語っている。「愛台12建設プロジェクト」には、▽全島快速交通網▽高雄自由貿易・生態港▽台中アジア太平洋海空オペレーションセンター▽桃園国際航空タウン──などが含まれる。
なお、蕭次期副総統は22日の当選後の記者会見で、物価上昇が新政権の厳しい課題になるという認識を示した上で、「物価小組」を組織して物価上昇に対する中長期的措置を検討する考えを表明した。蕭次期副総統自身は、投資による経済成長で所得増を図り、物価上昇の圧力に対抗するのが望ましいという意向だ。