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鴻海がシャープ買収、合併効果は「計り知れず」


ニュース 電子 作成日:2016年3月31日_記事番号:T00063308

鴻海がシャープ買収、合併効果は「計り知れず」

 EMS(電子機器受託生産サービス)世界最大手、鴻海精密工業は30日董事会で、シャープに3,888億円を投じて株式66%を取得することを決議した。両社は4月2日に契約を締結する。鴻海がシャープが持つ電子部品の高い技術力を獲得し、部品から組み立てまで一貫サービスを提供すれば、受託生産の競合は値下げ以外に太刀打ちする手段がなくなる。有機EL(OLED)パネルを採用するといわれるアップルのiPhone受注も、シャープ技術が競合への強い武器になり得る。31日付工商時報など台湾メディアは「虎(鴻海)が翼を手に入れた」と買収効果を高く評価している。

/date/2016/03/31/00honghai_2.jpg戴​副総裁(右)は、出資額3,888億円は8並びで縁起が良いと語った(30日=中央社)

 鴻海の戴正呉副総裁は記者会見で、シャープに3,500億円の偶発債務が発覚したことを受けて、双方は協議の結果、2月25日に決定した出資額4,890億円を減額したと説明した。第三者機関に評価を依頼しての適正価格で、買い叩きではないと強調した。シャープとの取引は5年、第10世代液晶パネル工場「堺ディスプレイプロダクト」(SDP、堺市)の共同運営は4年にわたり、鴻海はシャープを最も理解していると述べた。技術流出を懸念する日本の報道に対しては「これまでSDPからそうした事実はあったのか」と不満の意を示した。

 郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は、「シャープの真のポテンシャルを解放し、ともに高みに到達できると信じている」と期待感を示した。

 経済部投資審議委員会(投審会)の張銘斌執行秘書は、鴻海から近く申請があれば、4月末の委員会で審議すると話した。今回は台湾の海外投資で過去4番目の規模となる(中国を除く)。

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イノラックスと協力関係に

 市場調査会社、IHSディスプレイサーチの謝勤益研究総経理は、鴻海グループは中国に低温ポリシリコン(LTPS)パネル工場を2基、傘下の群創光電(イノラックス)が台湾に1基保有しており、シャープからの技術移転でLTPSパネル技術を向上できると指摘した。また、シャープは有機ELパネルを世界で初めて開発しており、アップルの有機ELパネル採用を見込み、鴻海は有機ELパネル生産ラインに資金を注ぎ込むと予測した。このほか、鴻海がSDPを100%掌握することで、SDPとイノラックスがパネルの生産能力を融通したり、製品ラインアップで協力し合うことができると分析した。

 さらに謝・研究総経理は、シャープはパネルだけでなく、カメラレンズ、CCD/CMOSイメージセンサーや、高い色飽和度、発光効率のLED(発光ダイオード)などの部品技術でも最先端を走っていると指摘した。

 謝・研究総経理は、鴻海はシャープからこうした部品を優先的に調達できるだけでなく、シャープが組み立てた製品の出荷先となり得るので、両社の可能性は計り知れないと語った。

IoT・太陽電池にも期待感

 証券会社も、鴻海は液晶パネルのほか、シャープが筆頭株主のカンタツ(本社・栃木県矢板市、阿久津肇寿社長)のカメラレンズなど、部品の調達力が向上すると指摘した。シャープのブランド力で、白物家電だけでなく、スマート家電などIoT(モノのインターネット)商機も狙える。

 シャープは太陽電池の日本最大手で、鴻海はソフトバンクと太陽光発電所で提携すると発表している。市場では、シャープと長く提携関係にある新日光能源科技(ネオソーラーパワー、NSP)、昱晶能源科技(ジンテック・エナジー)が恩恵を受けるとの見方が出ている。

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