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鴻海シャープ買収契約、2年で黒字化目指す


ニュース 電子 作成日:2016年4月6日_記事番号:T00063355

鴻海シャープ買収契約、2年で黒字化目指す

 鴻海精密工業とシャープは2日、シャープの買収契約(議決権の66%を取得)を締結し、日台を代表する大企業同士の戦略提携が幕を開けた。有機EL(OLED)に2,000億円など総額3,888億円の出資計画に続き、両社が共同運営する堺ディスプレイプロダクト(SDP)の会長、社長がシャープ副社長(経理・財務本部長)、ディスプレイデバイスカンパニー社長に就任する新人事を発表した。ディスプレイ事業強化、財務体質改善を優先課題に据え、早期の黒字転換を目指す。6日付経済日報などが報じた。

/date/2016/04/06/00top_2.jpg鴻海の戴副総裁(左)とシャープの高橋興三社長(右)が調印した。郭董事長(中)は65歳になったがリタイアせず、年間売上高10兆台湾元(約34兆円)を目指す(2日=中央社)

 郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は2日、シャープへの出資は買収ではなく戦略提携だと強調し、黒字化は個人的には2年で可能と考えているが、4年と言っておくと述べた。日台の文化の違いについては、シャープも鴻海もグローバル企業だと強調しつつ、鴻海グループでは毎年3~5%の人員削減を行っているが、シャープ従業員の雇用はできる限り守ると話した。

 シャープは5日、野村勝明・SDP会長がシャープ副社長執行役員(経理・財務本部長)を兼務、桶谷大亥SDP社長がシャープのディスプレイデバイスカンパニー社長に就任するなどの6日付人事を発表した。シャープ社長は、鴻海の戴正呉副総裁の呼び声が高い。

 証券会社の間では、鴻海のシャープ買収の背景には、サムスン電子に有機ELパネル調達で依存したくないアップルの思惑があるとの見方が出ている。

IGZOに期待感

 郭董事長は、シャープのIGZO(酸化物半導体、イグゾー)こそモバイル端末の主流で、サムスンの有機ELより出遅れたものの、研究開発(R&D)に時間がかからず、コストも低いので、1年あればIGZOと有機ELの応用製品の比率を6:4に逆転できると語った。

 郭董事長はまた、シャープの家電製品のラインアップを今後1年で現在の5~10倍に増やし、2年で日本市場シェアを現在の50%から70%に拡大すると表明した。

 群創光電(イノラックス)は5日、鴻海のシャープ買収で、グループのパネル事業の発展が期待できるとコメントを発表した。

パネル首位へ

 鴻海のシャープ買収について、中国の市場調査会社、群智諮詢(シグマインテル・コンサルティング)は、鴻海グループの来年のパネル生産能力は5,747万平方メートルで世界市場シェア20.5%となり、LGディスプレイ(LGD)、サムスンディスプレイ(SDC)を押さえて首位に立つと予測した。台湾メーカーの世界市場シェアは34.2%と、首位の韓国メーカーの38.9%に迫り、3位の中国メーカーの23.7%に差を付ける見通しだ。

 市場調査会社、ウィッツビュー・テクノロジーは、鴻海のシャープ買収で、韓国メーカーとの技術格差を大幅に縮められると予測した。シャープのLTPS(低温ポリシリコン)パネル生産能力の面積は世界市場シェア16%で3位だが、イノラックスのシェア5%を合わせれば、シェア21%でLGDを抜いて2位に浮上すると指摘した。

 市場調査会社、IHSは、鴻海グループは、イノラックスとシャープを合わせて、車載用パネルの世界首位に浮上すると指摘した。昨年末の車載用パネルの世界市場シェアは▽ジャパンディスプレイ(JDI)、17.3%▽イノラックス、14.4%▽シャープ、12.5%▽友達光電(AUO)、11.8%▽LGD、10.5%▽中華映管(CPT)、10.6%──だった。

設備調達が課題

 鴻海グループは今後、製造設備調達が課題になるとの指摘もある。韓国メディアの報道によると、有機ELパネル製造装置大手、キヤノントッキは、サムスン電子と京東方科技集団(BOEテクノロジーグループ)から今後3年の大口受注を得ており、LGDが発注しても期限内に納入を受けられない状況だという。