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熊本地震で供給網断絶の恐れ、ソニーなど半導体工場停止


ニュース その他分野 作成日:2016年4月18日_記事番号:T00063606

熊本地震で供給網断絶の恐れ、ソニーなど半導体工場停止

 熊本県を中心に14日から続く地震を受け、ソニー、ルネサスエレクトロニクスなどIDM(垂直統合型の半導体メーカー)大手が現地工場の生産を停止しており、台湾ではサプライチェーン断絶が懸念されている。一方、アップル製品の動向把握で定評のある凱基証券(KGI)の郭明錤アナリストは、ソニーがCMOSイメージセンサー(CIS)を供給するアップルの次世代スマートフォン、iPhone7は、発売時期の遅れは生じないと予測した。18日付工商時報などが報じた。

/date/2016/04/18/00earthquake_2.jpg統計によると、九州の半導体生産額は日本の4分の1、熊本県は九州の4分の1を占め、九州の自動車生産量は日本の10%以上を占める(17日=中央社)

 ソニーは17日、大分県、長崎県の工場での生産を再開したが、CMOSイメージセンサーを生産する熊本工場(菊陽町)は生産を停止したままだと説明した。業界では、ソニーのCMOSイメージセンサーの月産能力2万~3万枚が停止していると推測されている。業界関係者は、サプライチェーンに在庫はあるものの、ソニーの生産再開は早くても3週間先の見通しで、月末まで復旧できない場合、第2四半期のスマートフォンの在庫積み増しに影響し、800万画素以上のCMOSイメージセンサーが深刻な供給不足に陥る恐れがあると指摘した。

 半導体業界関係者は、2月6日に発生した台湾南部地震で、ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は生産能力を地震前の水準に回復するまで2週間かかったと指摘。熊本地震は余震が続いており、日本のIDMはなかなか再開に踏み切れないと予測した。

サムスンに緊急受注、コアジア恩恵

 欧州系の証券会社は、iPhone7はデュアルカメラ搭載となる見通しで、ソニーは主に熊本工場でCMOSイメージセンサー生産能力を増強していると指摘。一方、凱基証券の郭アナリストは、ソニーのCMOSイメージセンサーは、長崎、山形工場からの出荷比率が70~75%に上るため、熊本工場の生産停止による影響は限定的で、カメラモジュールの生産に要する時間は1カ月のみのため、iPhone7を量産する6~7月の1カ月前に復旧すれば、iPhone7の発売時期に遅延は生じないと予測した。

 iPhoneサプライヤーは、ソニーが第2~3四半期はアップルなどの大口顧客に優先的に供給するため、中国のローエンドスマホメーカーなどがサムスン電子にCMOSイメージセンサーを緊急発注していると指摘。サムスンのCMOSイメージセンサーを中華圏で独占的に代理販売している擎亜国際科技(コアジア・マイクロエレクトロニクス)が恩恵を受けそうだ。/date/2016/04/18/Kyushu_2.jpg

TACフィルム受注増も

 シリコンウエハー台湾最大手、台塑勝高科技(フォルモサSUMCOテクノロジー)は17日、同社大株主で、半導体用シリコンウエハー世界2位のSUMCOは佐賀県に工場があるが、現地の震度は3で、半導体業界の生産に影響が出る震度4に達しなかったので、影響はないと説明した。

 液晶偏光板の材料、TAC(セルローストリアセテート)フィルム最大手、富士フイルムと、PVA(ポリビニルアルコール)の日本合成化学も熊本工場の稼働を停止した。台湾のTACフィルム大手、達輝光電(TACブライト・オプトロニクス)は、日本メーカーの熊本工場停止で、受注が増える可能性が出てきた。同社は、3,000万平方メートルの生産ラインに加え、昨年第2期工場が完成し、生産能力が8,500万~9,000万平方メートルに増える見通しだ。

和泰汽車、「当面影響なし」

 トヨタ自動車も17日、18~23日に国内工場を段階的に停止すると発表した。台湾総代理店、和泰汽車は、熊本地震の前に九州工場で生産したレクサスが台北港に届いており、当面はレクサス、トヨタの輸入車の納車に影響は出ないと強調した。トヨタの九州工場はレクサスの重要生産拠点で、台湾で人気のSUV(スポーツ用多目的車)「RAV4」も生産している。

 日産自動車も16日、福岡県の工場の操業を見合わせた。日産と提携している裕隆集団は16日、主要な部品の工場は被災地になく、同社への影響はほぼないと表明した。

【表】