ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

中国に「中華民国旗男」、公安に連行もポリシー曲げず


ニュース 社会 作成日:2016年6月1日_記事番号:T00064472

中国に「中華民国旗男」、公安に連行もポリシー曲げず

 中華民国の国旗「青天白日満地紅旗」は、30日に中国メディアが蔡英文総統と米商務省のジャドッテ次官補が会談したニュースを伝えた際も、2人の背後に立て掛けられていた旗にモザイクを入れるなど、中国では依然厄介者の扱いとなっている。

 しかしそんな中国で、中華民国旗を全面にプリントしたTシャツを着て公の場に堂々と出掛ける男性が存在する。共産党が歴史をねじ曲げ、国民を騙してきたと主張するこの男性は、公安に何度も連行されながらポリシーを変えず、現在も自説を訴え続けている。

 抗日戦争を戦った中国国民党軍の上校(大佐)を父親に持つ重慶市在住の韓良さん(70代)は、幼いころに父と生き別れた上、「黒五類」(文化大革命時代に労働者階級の敵とされた5種類の階層)と呼ばれ、教育や就職で不利な扱いを受けたばかりか、恋人との結婚も親に反対されて独身のまま一生を過ごしてきた。

 そんな彼は40歳の時に再会した父親から、抗日戦争を戦い、中国を守ったのは国民党であり、国民は共産党に騙されてきたと聞かされた。そしてこれがきっかけとなって反政府思想を持つに至り、1年中「中華民国Tシャツ」をまとって街頭に立ち、正しい歴史認識と公正な社会の実現を訴える演説を行うようになった。

 しかし中国の公安が見逃すはずもなく、3年前に抗日戦争勝利を記念して建てられた「解放碑」(時計台)の前で人権の尊重、民主化、法治主義を訴える演説を行っていたところ公安関係者に殴打され、腕を折られた上に数カ月間、身柄を拘束された。

 しかし韓良さんはそれでも沈黙せず、留置所の中で受刑者に父親のことや抗日戦争や国共内戦の真実を話して聞かせ、しかも相手から大いに共感を得た。これを見て公安は受刑者の間に反政府思想が広がると懸念し、その後、彼をあまり拘束しなくなったそうだ。

 ただ公安は、「中華民国の父」孫文の命日や双十節(辛亥革命記念日)、人権節などに韓良さんが公の場で演説を行えば、暴動につながる恐れもあると懸念し、こういった記念日前に彼を「旅行」に連れ出すようになった。昨年は計37日間も公安関係者3~4人の同行の下、各地の観光スポットを巡ったそうだ。

 韓良さんはおとなしくこの旅行に付き合っているようだが、「公安がオレを洗脳しようとするなら、オレだって相手を洗脳してやる」と豪語しており、旅行中、公安相手に世界の潮流や社会問題を説いているそうだ。

 中国で民主化を求める学生運動を武力で弾圧した天安門事件(1989年)が発生した6月4日を間近に控える中、韓良さんはまたあす(2日)から「旅行」に出掛けるという。