ニュース 電子 作成日:2016年6月8日_記事番号:T00064622
ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の張忠謀(モリス・チャン)董事長は7日、中国資本の台湾IC設計会社への投資を認める規制緩和に賛成との立場を示した。ただし、中国資本に董事会参加を認めず経営には不関与とし、台湾IC設計会社の知的財産権を保護することを条件として挙げた。工業技術研究院(工研院)は、このまま解禁しなければ、技術や人材が大量に流出し、台湾IC産業は2025年に消失すると警告した。8日付経済日報などが報じた。
張董事長は7日の株主総会で、昨年に続き、今年も成功の1年とすると述べた。TSMCの15年の配当は6元に決まり、前年を1.5元上回った(7日=中央社)
張董事長は、中国資本が台湾のIC設計投資会社に出資することを歓迎するが、知的財産権を保護するために、董事会への董事派遣は受け入れるべきでなく、管理職にも配置するべきでないと話した。多くの技術が特許に当たるためだ。さらに、中国のIC設計業界は米国、台湾、日本、欧州よりも成長が著しく、10年後には世界最大規模になり得ると予測した。
業界関係者は、TSMCは中国・南京市での12インチウエハー工場設置計画でも、知的財産権保護重視から、単独出資にこだわったと指摘した。
経済部、「当面解禁しない」
経済部工業局の呂正華副局長は、李世光経済部長が6日に立法院で答弁した通り、当面は中国資本にIC設計投資を解禁する考えはないと説明した。
杜紫宸・工研院知識経済競争力研究センター主任は、聯発科技(メディアテック)が中国の通信キャリア大手、中国移動通信(チャイナ・モバイル)や半導体大手、紫光集団などから出資を受け入れられなければ、中国での第5世代移動通信規格(5G)市場競争で中国企業に敗北すると予測。紫光集団傘下のIC設計大手、展訊通信(スプレッドトラム・コミュニケーションズ)、海信集団(ハイセンスグループ)やクアルコムに技術や人材が流出し、台湾IC産業自体が25年になくなると懸念を示した。
騰旭投資の程正樺投資長も、中国IC設計産業は遅かれ早かれ台湾を追い抜くので、台湾IC設計会社への出資受け入れを解禁すれば、商機が得られると分析した。また、解禁しなくとも中国企業は高待遇で台湾人材を引き抜くと指摘した。
一方、台湾大学電機工程学系の林宗男教授ら学者4人は、TSMCのようなファウンドリーは資金力が必要で移転も困難だが、IC設計会社は人材、技術、特許、知的財産権から成り、そうしたノウハウの持ち出しは簡単で、中国資本からの出資を受け入れれば技術が流出し、産業が崩壊すると訴えた。
7ナノ競争、「サムスンより優位」
TSMCの劉徳音共同執行長は、10ナノメートル製造プロセスは昨年技術認証を完了し、今年末に量産する予定で、開発中の7ナノプロセスは17年上半期に試験生産を開始する予定だと語った。張董事長は、7ナノプロセス競争ではTSMCとサムスン電子しか残っておらず、量産時期、処理速度、消費電力、価格などの点から、TSMCの方が優位だと述べた。インテルはライバルとなり得るが、TSMCにとって大口顧客で、相互補完の関係にあると話した。
張董事長は、半導体産業の成長率は昨年がほぼゼロで、今年は2~3%、今後5~10年の年平均成長率(CAGR)も2~3%にとどまると予測。市場成長が鈍化する一方、半導体メーカーの数は多く、市場の資金は潤沢で、今後もM&A(合併・買収)が加速すると予想した。
張董事長は、これまで世界で敵対的買収が成功したケースは少なく、パッケージング・テスティング(封止・検査)大手の日月光半導体製造(ASE)と矽品精密工業(SPIL)が持ち株会社設立で最終合意したことは好ましいと述べた。ただ、中国や米国当局の企業結合審査が待ち構えていると指摘した。
TSMCの昨年連結売上高は前年比10.6%増の8,434億9,700万台湾元(約2兆8,000億円)で過去最高、粗利益率は48.7%、純利益は16.2%増の3,065億7,400万元で過去最高だった。
台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。
ワイズコンサルティンググループ
威志企管顧問股份有限公司
Y's consulting.co.,ltd
中華民国台北市中正区襄陽路9号8F
TEL:+886-2-2381-9711
FAX:+886-2-2381-9722