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台プラ越製鉄所が賠償5億ドル支払いへ、魚の大量死事件で「詰め腹」


ニュース 鉄鋼・金属 作成日:2016年7月1日_記事番号:T00065010

台プラ越製鉄所が賠償5億ドル支払いへ、魚の大量死事件で「詰め腹」

 ベトナム当局は30日、台塑集団(台湾プラスチックグループ)が同国北中部ハティン省に建設した大型製鉄所が、周辺海域の魚の大量死を招いた原因との結論を発表した。ベトナム製鉄所は同日、謝罪を表明。損害賠償5億米ドルを支払う意向だ。当初否認していた台プラグループが責任を認めたのは、ベトナム政府が市民の不満をなだめるために、第1高炉の火入れを条件に迫ったためとの見方が出ている。1日付経済日報などが報じた。

/date/2016/07/01/00top_2.jpg陳源成FHS董事長(中)は、ベトナム市民に許しを請いたいと語った(30日=中央社)

 台プラグループのベトナム大型製鉄所、フォルモサ・ハティン・スチール(台塑河静鋼鉄興業、FHS)は同日、4月中旬にベトナム中部の海域で魚の大量死が発生したことを受け、ベトナム当局が調査した結果、同社が試験操業している製鉄所の下請けの作業ミスが、魚の大量死の原因と認定されたと説明した。ベトナム当局関係者は、工場の建築と運営規模が環境汚染をもたらし、魚の大量死が発生したと語った。

 FHSは、ベトナム政府と市民に対し謝罪の意を示し、漁業関係者の生活への影響など、市民の経済損失と海洋汚染への対応と改善に協力し、誠意を尽くすと表明した。FHSは台湾、ベトナムで出した声明で、損害賠償額について触れていない。ただ蘋果日報によると、台プラグループは28日、ベトナム被害者のために損害賠償5億米ドルを支払うと認めた。

 FHSは、▽台プラグループ、70%▽中国鋼鉄(CSC)、25%▽JFEスチール、5%──が出資。第1高炉は投資額3,300億台湾元(約1兆500億円)で、台湾企業初となる海外の高炉として6月25日に火入れ予定だった。今回の事件後、同社は火入れの予定時期を発表していない。

現地当局、不明瞭な説明

 現地の台商(海外で事業展開する台湾系企業)は、ベトナム当局がFHSとの交渉で、責任を認めて謝罪し、損害賠償を支払うなら、第1高炉の火入れの再申請を認めると条件を出したため、FHSが5億米ドルの賠償案を提示したと明かした。このため、支払いは早急に行われると予想した。

 台商はまた、ベトナム当局は市民の怒りを鎮めるために、台プラグループを利用したとの見方を示した。魚の大量死は、4月初旬にベトナム新政権が発足した直後、同月中旬に発覚した。現地当局は当初調査の結果、FHSは無関係と認定していたが、市民が4月末にFHSの排水が原因だとして抗議デモを繰り広げたことで、当局は態度を一変した。当局はFHSに対し、還付を受けた税金7,000万米ドルの返還を求め、第1高炉の火入れを妨げることもした。

 ある台商は、ベトナム当局はFHSの製鉄所の排水が原因と認定した証拠を明示しておらず、下請けの企業名も具体的なミスの内容も説明がなく、信頼性に欠けると指摘した。また、魚の大量死が見つかった現場は、製鉄所から300カイリ(約550キロメートル)離れている上、製鉄所の試験運転を開始したのは昨年10月で、今年4月になって魚の被害が確認されたのはおかしいと疑問の声も聞かれた。

新南向政策、高い授業料

 蔡英文政権は、東南アジア諸国連合(ASEAN)やインド投資を強化する「新南向政策」を掲げている。総統府新南向政策弁公室の黄志芳主任は、この事件は新南向政策に影響しないと強調した。

 聯合報は、FHSの損害賠償5億米ドルは、新南向政策推進にとって、高い授業料となったと指摘。台湾の従来型産業は東南アジアに進出する際、現地の法令や環境保護政策をよく理解して準備しなければならないと説いた。