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国民家電「大同電鍋」、多様化で日本の高性能炊飯器に対抗


ニュース 家電 作成日:2016年7月18日_記事番号:T00065276

国民家電「大同電鍋」、多様化で日本の高性能炊飯器に対抗

 台湾で一家に1台あると言われる電気鍋「大同電鍋」は誕生から50年以上がたち、若者離れや、日本ブランドの高性能炊飯器への市場シェア流出に直面している。大同(TATUNG)はこのため、ハローキティなど外観デザインの多様化、人工知能(AI)搭載などの高性能化を進め、伝統的な老舗ブランドイメージからの脱却を図っている。一方、レトロなデザインと、スイッチを押すだけのシンプルさが受け、台湾を訪れる日本人旅行者が土産として持ち帰る「逆爆買い」現象も起きている。18日付自由時報などが報じた。

/date/2016/07/18/00tatung_2.jpgぐでたまの大同電鍋(同社提供)

 大同は1918年設立。60年、台湾初の独自開発、台湾製をうたう大同電鍋を発売した。大同電鍋は長年、台湾市場シェア9割以上を誇り、年間販売台数は45万~50万個、累計販売台数は1,450万個に上る。台湾人口2,300万人余りの約半分に相当し、1世帯に平均1.7個ある計算だ。大同電鍋1,450万個を積み上げると、台北101ビル8,403個分の高さになる。

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LINEやFBでアピール

 大同は大同電鍋の発売50年を迎えた11年以降、定番カラーの赤と緑に加え、サンリオのハローキティ、リトルツインスターズ(キキララ)、ぐでたまや、台湾の人気イラストレーター「Cherng」(チェン)のマレーバクなど、新デザインの製品を発売している。張忠棋・大同家電電子事業部工場長は、こうしたコラボレーション製品は若者の目を引くためと説明した。

 大同の実店舗、大同3Cの会員は平均年齢50~60歳と高い。若者市場を開拓するため、大同はコラボ製品投入のほか、13年からLINE(ライン)の公式アカウント「大同TATUNG同楽会」を設立し、無料スタンプを配布したり、毎週木曜日に大同電鍋を使った料理のレシピを提供している。LINEの友達追加は700万件、フェイスブック(FB)ページのファン数は22万件に上る。

 また大同は近年、高性能製品「大同智慧AI電鍋」「複合料理無水鍋」「超美型小型鍋」などを発売している。これについて張工場長は、日本ブランドの製品の人気の秘訣は多機能な点と指摘。ただ、多機能製品は使いやすいとは限らず、大同はWi-Fi接続やスマートフォン用アプリ対応などで電子化を進めるほか、これまでの大同電鍋と同様、指1本で使えるようにしたいと語った。

留学生の必携品

 大同が若者離れを懸念する一方、台湾のインターネットユーザーの間では、大同電鍋は煮る・焼く・炒めると何でもでき、海外に留学する台湾人が必ず携帯するほどで、母親の嫁入り道具の一つだがまだ壊れていない「神ってる」家電製品だなどの声が上がっている。

 また日本人の間でも近年、個人ブロガーや「奇怪ねー台湾」などの著書がある台湾コーディネーター、青木由香氏に取り上げられたことで、台湾旅行の際に買って帰る人気商品の一つとなっている。

 大同電鍋は大同3Cで10人用が2,160台湾元(約7,100円)から。

パネル事業は赤字

 大同は2015年連結売上高が947億元で、営業損失94億元、純損失は30億8,000万元と、2年連続の赤字だった。赤字の原因は投資事業で、液晶パネルメーカーの中華映管(CPT)は長年にわたり利益が出ていない。傘下のマザーボード大手、精英電脳(エリート、ECS)はベネズエラ政府から売掛金9,000万米ドルが回収できていない。ただ太陽電池用多結晶シリコンウエハー大手、緑能科技(グリーン・エナジー・テクノロジー)は今年1月やっと黒字転換した。大同は今年上半期の粗利益率が改善し、本業では前年より大幅に成長したとみられている。

【表】