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バス炎上事故は豪華設備に問題か、安全軽視に警鐘


ニュース 社会 作成日:2016年7月20日_記事番号:T00065331

バス炎上事故は豪華設備に問題か、安全軽視に警鐘

 19日午後に桃園国際空港への連絡高速道路(国道2号)で発生した観光バス炎上事故は、中国人観光客24人を含む乗員乗客26人全員が死亡し、死者数では2008年の中国人客受け入れ開放以降で最悪となった。観光客らが台湾の大型バスに慣れておらず、脱出方法が分からなかったことが惨事の要因になったとみられる。台湾の観光バスは、中国人ツアーを受注するために大型テレビやカラオケなど電器設備を運転席近くに設置しているため、電線のショートなどによる発火が起きやすいといった、安全軽視に警鐘を鳴らす指摘も出ている。20日付聯合報などが報じた。

/date/2016/07/20/00bus_2.jpgバスは全焼した。消防隊は、消火活動に26分間かかり、現場の温度は200~300度とみられ、まるで地獄のようだったと話した(19日=中央社)

 中国人観光客24人と台湾人運転手、ガイドは7泊8日の台湾一周ツアーを終え、帰途につくため桃園空港に向かっていた。桃園空港まで5キロメートル足らずの地点でバスから突然煙が上がり、蛇行しながら1.4キロ走行後、ガードレールに衝突して車内は火の海となった。

 到着した消防による消火活動は及ばず、26人全員が焼死体で発見された。後方のドア付近に9人、非常口付近に4人が、残りは通路に散らばっており、事故当時の混乱がうかがえる。犠牲者は運転手(53)、ガイド(47)を含む男性10人、女性16人で、最年少は13歳の女児、14歳の男児、女児も含まれていた。

 検察と警察の初期捜査によると、運転手後方の設備かケーブル線から出火したとみられるが、原因はまだ不明だ。非常口は高温で変形して開かず、さらに後方出口のドアも車外のガードレールに遮られて10センチしか開かない状態だった。乗客は大量の煙を吸い込んでおり、3個備え付けられていたハンマーで窓を割ることもできなかったようだ。

 中華民国遊覧車客運業品質保障協会の林祥生技術顧問は、台湾の観光バスは大型テレビやカラオケなどの設備が運転席後方に集中しており、ケーブル線がショートしやすいと指摘。観光業界は新車重視で、バス業者がコスト削減に励み、悪循環に陥っていると警告した。

同型車両17台、リコールへ

 事故車両は、2010年出荷で車齢6年、前回の車検は1月、次回は7月29日の予定だった。定員45人の4列シートに26人が搭乗していた。交通部公路総局は、12社が保有する同型車両17台にリコール(回収・無償修理)を命じる方針だ。

 運転手は25日間の休暇後、7月12日から同ツアーの運転手を務めており、疲労や飲酒は事故原因から除外された。これまでに処分の記録はなかった。

 交通部観光局は、同ツアーは2,800人民元(約4万4,000円)の格安ツアーだったが、違反は見当たらないと指摘。中台双方の保険会社から、被害者に保険金が1人当たり合計750万~800万台湾元(約2,500万~2,600万円)が支給されると説明した。

陸委会が緊急連絡

 交通部観光局の統計によると、08年以来、訪台した中国人のけが人は390人、死者は90人に上り、うち観光バスの事故による死傷者が298人を占めた。死者20人以上の事故は3件で、今回の事故のほか▽2010年、蘇花公路(省道台9線)の土砂崩れで観光バスが海に転落(中国人の死者20人)▽15年、台北市での復興航空(トランスアジア航空)機墜落事故(中国人の死者24人)──。

 行政院大陸委員会(陸委会)は、事故発生後、携帯電話のショートメールで中国・国務院台湾事務弁公室(国台弁)に第一報を送った。陸委会関係者は、中国の対台湾窓口機関、海峡両岸関係協会(海協会)などからも国台弁に報告していると説明した。中台間の連絡は海協会と海協会海峡交流基金会(海基会)などが担当し、国台弁と陸委会のホットラインは再開していないと述べた。