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産業界が労働政策に「不信任案」、蔡政権最初の試練に


ニュース その他分野 作成日:2016年7月27日_記事番号:T00065465

産業界が労働政策に「不信任案」、蔡政権最初の試練に

 基本工資審議委員会(最低賃金審議会)は26日、使用者側の代表者7人が全員欠席したため流会となり、議事が9月末に先送りされることになった。国定休日7日間の復活や、「一例一休」(法定休日と所定休日を1週間に各1日)方式による完全週休2日制導入を柱とする労働基準法改正案、8月から7日以上の連続勤務を禁止する労働基準法の解釈変更などに対し、産業界が強い抗議を示した格好だ。同日発表された世論調査によると、蔡英文政権の支持率は55.9%と5月20日の就任当時より14ポイント低下しており、労働者重視政策は手法の見直しを迫られる可能性がある。27日付工商時報などが報じた。

/date/2016/07/27/00top_2.jpg最低賃金審議会は使用者側7人以外が全員出席し、ある労働者側代表は最低時給を126台湾元(約410円)に6元引き上げる提案に言及した(26日=中央社)

 労働部が労働基準法施行細則の改正を撤回し、国定休日7日が復活したことを受け、経済団体は先月末、国定休日復活を撤回しない限り、労使交渉を無期限で拒否すると宣言。最低賃金審議会などをボイコットする意向を示していた。

 最低賃金審議会は労使の代表者が各7人、専門家が4人、政府の代表者が3人の合計21人で構成されている。26日の会議には、中華民国全国工業総会(工総、CNFI)代表をはじめ使用者側の代表者7人が全員欠席した。

 郭芳煜労働部長は、労働部は既に誠意を示しており、使用者側の全員欠席は遺憾だと述べた。廖恵芳・労働部政務次長は、9月末に開催する会議では過半が出席して定足数がそろえば、使用者側が不在でも審議を行うと話した。

蔡総統、経済団体会合をドタキャン

 中華民国工商協進会(CNAIC)の林伯豊理事長は、国定休日7日間復活の交渉過程を例に挙げ、「対話の結果、対立が生じただけだった」と蔡政権を批判。工商協進会の会員企業の生産額は台湾GDP(域内総生産)の65%以上を占めており、産業界の意見にもっと耳を傾けてほしいと訴えた。

 また、同日開催の工商協進会会員大会は、前日夜に蔡総統欠席の連絡があった。林理事長は、総統が経済団体との約束を取り消したのは初めてで、遺憾だと述べた。

 工商時報は、蔡総統が理由も告げずに欠席したことで、産業界の新政権に対する信頼感がさらに薄れたと指摘した。蔡総統の欠席は、完全週休2日制に向けた「一例一休」方式をめぐる政府と産業界の意見対立が背景にあるとみられている。

 工商協進会会員大会に出席した遠東集団(ファーイースタングループ)の徐旭東(ダグラス・シュー)董事長はメディアのインタビューに対し、労働団体が意見を表明するのは構わないが、今は経済発展に向けて団結して努力するときだと強調。私も休暇が好きだが、経済コストを考えると、台湾の休日は多過ぎると話した。

「新政権への警告」

 台湾民意基金会が発表した世論調査によると、蔡総統による国家の重要事項の対処方法を支持するとの回答は▽5月、69.9%▽6月、67%▽7月、55.9%──と2カ月で14ポイント低下した一方、支持しないとの回答は▽5月、8.8%▽6月、15.6%▽7月、21.1%──と12.3ポイント上昇した。調査は7月18~19日に電話で1,098人を対象に行われた。

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 台湾民意基金会の游盈隆董事長(元民進党副秘書長)は、支持率の低下は蔡政権への警告で、▽第1原子力発電所(新北市石門区)1号機の再稼働問題▽南シナ海の領有権をめぐる仲裁裁判の判決▽台湾海軍によるミサイル誤射事件──なども原因だと述べた。

【図】