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アップルが供給網に異例の値下げ要求、iPhone7出荷に影響か


ニュース 電子 作成日:2016年8月11日_記事番号:T00065763

アップルが供給網に異例の値下げ要求、iPhone7出荷に影響か

 アップルが9月に発表するとされるスマートフォン次世代機種、iPhone7の部品サプライヤーに対し20~25%の価格引き下げを要求したようだ。需要期に値下げ要求が行われたのは初めて。ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)、金属筐体最大手の可成科技(キャッチャー・テクノロジー)をはじめ9社は下半期の見通しが想定より悪いと、今年の粗利益率予測を前年より下方修正している。アップルが再値下げを迫れば、サプライヤーが利益確保のためにアップル以外を優先し、iPhone7出荷に影響する恐れがある。11日付経済日報などが報じた。

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 カナダのRBCキャピタルマーケッツのアナリスト、アミット・ダリヤナニ氏は最新レポートで、アップルのサプライヤー11社を調査したところ、9社が今年通年の粗利益率予測を下方修正していたことが分かったという。

 アップル受注の売上高構成比が16%のTSMCは、粗利益率予測を49.6%と前年比0.5ポイント引き下げた。アップルの売上高構成比が34%のキャッチャーは、粗利益率予測が42%で2.1ポイント引き下げた。ただ、アップルの売上高構成比が31%の半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)最大手、日月光半導体製造(ASE)は、粗利益率の予測が18.4%で前年と同じだ。

 アップルの売上高構成比が50%に上る鴻海精密工業は、外資のレポートで指摘されたことについて、いつも通りノーコメントだった。業界では、アップルから部品メーカーへの価格見直し要求で、組み立てメーカーの出荷が遅れる可能性があるとみられている。

 市場関係者によると、カメラレンズ世界最大手、大立光電(ラーガン・プレシジョン)は技術力と良品率の高さが認められ、iPhone7向けに多数の受注を得ており、アップルからの値下げ要求を免れたようだ。消息筋によると、防水スピーカー、APU(GPU統合型CPU)なども価格を維持している。

弱まる価格交渉力

 キャッチャーは、第2四半期の粗利益率が36.11%と過去5年半で最低だった。同社主管は、顧客の新旧製品の端境期で、大口顧客のために価格を引き下げたことが理由だと話した。アップルからの値下げ要求を受けたことを間接的に認めた格好だ。

 キャッチャーは、下半期は顧客の新製品発売に伴い、設備稼働率が上昇し、粗利益率も回復すると強調した。ただ証券会社は、iPhone7は大幅なデザイン変更がなく、出荷台数がそれほど伸びない見通しで、生産過剰となれば、サプライヤーの価格交渉力は弱まると予測した。

組み立て、値下げ余地なし

 証券会社は、アップルは創造性が失われたことで販売台数が伸び悩み、ドル安にも直面する中、利益を確保するためにはサプライヤーに値下げを迫るしかないと分析した。

 市場調査会社、IHSなどによると、アップルの最新機種、iPhoneSEの本体価格399米ドルに対し、材料コストは160米ドルと過去最低まで下がっている。アップルの利幅は6割に上るが、鴻海や和碩聯合科技(ペガトロン)は1台組み立てても3.8米ドルしか利益が出ない。アナリストは、組み立てメーカーはこれ以上の値下げを求められる状況ではなく、アップルによる過度のコスト削減は、サプライチェーンの健全な発展を妨げると懸念を表明した。

 富邦証券投資顧問の廖顕毅アナリストは、サプライヤー調査によると、今年下半期のiPhone7出荷台数は7,900万台の見込みで、前年同期のiPhone6sを12%下回ると予測した。4.7インチのiPhone7の組み立てコストは23米ドルと、iPhone6sの25米ドルから8%下がるとの見方だ。

【表】