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兆豊銀NY支店に罰金1.8億ドル、資金洗浄対策の不備問われる


ニュース 金融 作成日:2016年8月22日_記事番号:T00065952

兆豊銀NY支店に罰金1.8億ドル、資金洗浄対策の不備問われる

 政府系銀行、兆豊国際商業銀行(メガ・インターナショナル・コマーシャル・バンク)のニューヨーク支店がマネーロンダリング(資金洗浄)対策の不備を理由に米ニューヨーク州金融サービス局(DFS)より罰金1億8,000万米ドルを科された。台湾銀行業界で過去最高の罰金額で、同支店の7.2年分の利益に相当する。多額の罰金は銀行の経営に大きな打撃を与えるため、台湾政府は他行を含めた再発防止の対策を迫られている。22日付工商時報などが報じた。

/date/2016/08/22/00bank_2.jpg兆豊銀はマネーロンダリング対策を強化するため、今月中に防止センターを設立する方針だ(19日=中央社)

 兆豊銀の持ち株会社、兆豊金融控股(メガ・フィナンシャル・ホールディング)は19日、DFSが今年2月に行ったニューヨーク支店の2015年第1四半期の業務検査で、マネーロンダリングの疑いがある送金業務を報告していないと指摘されたと説明した。

 兆豊銀の広報担当者は、ニューヨーク支店からパナマ支店に向けて行った返金処理のうち、12年は疑わしい取引報告(SAR)70件余りを提出したものの、残り90件余りを報告していなかったため、銀行秘密法(BSA)違反やマネーロンダリング対策(AML)不備と 認定されたと補足説明した。10日以内に罰金納付を完了する。

 呉漢卿総経理は、例えば台湾では閉鎖口座への送金は返金処理を行うだけでよいが、米国では閉鎖口座は疑わしい口座として報告が必要になるなど、認識に相違があったと話した。

 米国に支店がある別の銀行関係者は、ニューヨーク支店の業務は単純で、多額の罰金処分は強盗に遭ったようなものだと話した。

 DFSは近年、マネーロンダリング違反や対策の不備で、BNPパリバ、HSBC、スタンダード・チャータード、三菱東京UFJ銀行など世界の金融機関10社以上に合計140億米ドル以上の罰金を科した。これに対し欧州諸国は、DFSの手法は不合理だと批判している。

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パナマ支店に疑い

 DFSは、同行ニューヨーク支店の最高コンプライアンス責任者(CCO)と法律責任者は銀行秘密法やマネーロンダリング対策の理解が乏しい上、営業部門の代表者を兼任しており、利益相反になると指摘した。また取引監視手順の文書は英語に翻訳されておらず、検査できない状態だったとした。

 さらに、兆豊銀がパナマに保有する2つの支店はニューヨーク支店との取引が13年は46億米ドル、14年は69億米ドルに上った上、多くの顧客が、膨大な内部機密文書「パナマ文書」が流出した法律事務所、モサック・フォンセカより設立への支援を受けていたため、説明を求めたが、兆豊銀から十分な回答が得られなかったと指摘した。

 DFSは、兆豊銀のコンプライアンス推進計画は形式的なものにすぎず、こうしたマネーロンダリング対策を軽視する金融機関には厳しい対応を取ると強調した。

 銀行関係者は、もし台湾の銀行全てが先進国の77拠点で、コンプライアンス専任の責任者を配置すれば、コストが1億台湾元(約3億2,000万円)以上増えると指摘した。コンプライアンス専任の責任者の雇用コストは米国や欧州で1人当たり年間400万元、日本や香港、シンガポールで300万元かかる。

報告漏れ、罰金5倍へ

 林全行政院長は21日、財政部、金融監督管理委員会(金管会)、中央銀行(中銀)から成る対策委員会を設置した。きょう22日、善後策の検討会合を開く。財政部は、今週中に政府系銀行8行を集め、再発防止のために全面検査を行い、内部統制、コンプライアンスなどを強化するよう求める。

 行政院は25日、マネーロンダリング防止法を改正し、疑わしい取引報告への罰金を500万元へと5倍に引き上げるほか、弁護士や会計士なども適用対象の範囲に指定する予定だ。

 財政部国庫署の阮清華署長は、中小規模の銀行は、兆豊銀と同じ目に遭った場合、重い罰金に耐えられないと話した。

【表】