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中国人客減少で初の旅行会社倒産、観光業界の警戒感高まる


ニュース 商業・サービス 作成日:2016年8月25日_記事番号:T00066024

中国人客減少で初の旅行会社倒産、観光業界の警戒感高まる

 中国人観光ツアー客の受け入れを専門とする創世紀国際旅行社(台北市中山区)が23日、不渡りを出して営業停止処分を受けた。旅行会社が、訪台中国人旅行者の減少が原因で事実上倒産したのは初めて。旅行商業同業公会全国聯合会(旅行業全聯会、TAAT)の李奇岳広報担当者は、中国人観光客ら26人が死亡した観光バス炎上事故が厳しい状況に追い打ちをかけており、政府が対策を取らない限り今後も倒産が相次ぐと懸念を示した。25日付経済日報などが報じた。

/date/2016/08/25/00top_2.jpg創世紀旅行社の責任者は香港人で、倒産後、香港に戻ったとされる(24日=中央社)

 創世紀旅行社の不渡り額は223万台湾元(約710万円)。既に台湾入りしている中国人ツアー客8組は旅行業全聯会が対応を引き受ける。いずれも7泊8日の台湾1周ツアーだ。

 交通部観光局の統計によると、7月の訪台中国人旅行者は延べ29万9,000人で前年同月比15%減と、5月から3カ月連続で2桁台の前年割れが続いている。中国人ツアーの受け入れ資格がある旅行会社は439社で、このうち6社が営業を停止している。

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 静宜大学観光事業学系の黄正聡副教授は、観光バス炎上事故後、中国人観光客の申請は1日当たり5,000~6,000件で、前年同期の半分だと指摘した。

 交通部関係者は、中国の国慶節(建国記念日、10月1日)連休、年末年始、来年の春節(旧正月)連休と中国人観光客が減少し続ければ、旅行会社の倒産が増えると懸念を表明した。

ツアー減少、資金繰り悪化

 創世紀旅行社は2004年9月設立で、資本金は600万元。従業員は40人余り。旅行業全聯会の李広報担当によると、同社は月40~50組を受け入れる中規模の中国人専門インバウンド旅行会社だった。従業員によると、ツアー料金は1人当たり3,000人民元(約4万5,000円)以下で、格安ツアーに属する。

 あるガイドによると、創世紀旅行社は経営難を打開するため、昨年末から中国の旅行会社に料金を支払って、内モンゴル自治区、新彊ウイグル自治区、黒竜江省から医療観光(メディカルツーリズム)のツアー客を受け入れ始めた。実際は2~3時間の健康診断や採血をするだけで、交通部観光局にコースを届ける必要がないため、買い物のバックマージンを見込んでいたが、参加者が期待していたほど買い物をせず、500万~600万元は損を出したと推測した。

 創世紀旅行社以外の中国人中心のインバウンド旅行会社も、受け入れツアーが50%以上減少している。学者は、中国人専門インバウンド旅行会社は現金商売で、受け入れツアーが減少すれば、すぐに資金繰りが悪化すると指摘した。 

パインケーキ販売、2割減

 鳳凰国際旅行社(フェニックス・ツアーズ)の張巍耀董事長は、数カ月以内にドミノ効果で経営体質が悪い旅行会社が倒産や営業停止に見舞われ、ホテルや観光バスも打撃を受けると予測した。

 観光バス業界は収入が30~40%減少している。台湾全土の観光バス1万7,000台のうち、約2割に当たる3,500台が中国人ツアー客専門だが、稼働率が低下している。中台間の航空路線は一部で搭乗率が50%を割り込んでおり、小型機への機体変更や減便を行っている。台北101展望台は中国人の入場者数が15%減少し、免税店は売上高が前年同期比20%減少した。

 糕餅商業同業公会全国聯合会(全聯会、TCOC)の呉冠徳理事長は、パイナップルケーキの年産額は200億元だが、2割減ったと指摘した。土産物はツアー最終日に買うことが多く、台北など北部の影響が大きいという。

 台東県の知本温泉観光発展促進協会の黄慶安理事長は、ホテルの客室稼働率は50%が損益分岐点だが、中国人向けホテルは稼働率が30~50%まで低下し、台北や高雄以外のホテルは給与カットや無給休暇、人員削減を実施していると明かした。先月には南部で中国人向けホテルが倒産している。

 大手求職求人情報サイト、1111人力銀行の調査によると、観光業者の65.7%が中国人観光客の減少を実感しており、39.8%は業績が低下したと回答した。

【図】