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患者中心の医療改革、長庚医院が取り組み


ニュース 公益 作成日:2008年4月7日_記事番号:T00006613

患者中心の医療改革、長庚医院が取り組み

 
 台塑集団(台湾プラスチックグループ)の創業者、王永慶氏の娘婿である楊定一長庚大学董事長は、今年台湾各地の長庚医院の分院で、患者が症状に応じて複数の専門医から同時に診察を受けられる疾病センターを27カ所まで増やす考えを示した。医療コストが増大する高齢化社会において、効率的な治療を目標に病院の医療リソースを統合し、健康保険制度の見直しを含め「患者の利益に基づく医療」の実現を目指す。7日付経済日報が報じた。
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窓口は一つ、行列は1度だけ

 楊董事長によると、長庚医院は3年前に、一つの窓口を通じて専門の異なる複数の医師から同時に診察を受けられる疾病センターの設立を始めた。現在林口長庚医院では既に14の疾病センターを開設し、今年は高雄に10カ所、嘉義に3カ所の計13カ所を新たに開設する計画だ。疾病センターの治療項目には、心臓血管疾病、脳卒中、肝臓病など、台湾の10大疾病のうち9項目が含まれる。

 長庚医院の疾病センターでは、従来のように別々の専門医の診察を受けるために何度も行列に並ぶ必要はなく、患者の症状について各専門医が同時に診察を行うという。診察はコンピュータによって手配され、患者は診察予定時刻の10分前に病院に到着すればよい。

 楊董事長によると、同センターの運営がうまくいけば、病院の経営効率化が進み、患者が同じ薬を重複して服用するような浪費もなくなるという。ただ、こうした医療モデルの推進には病院が高い機能性を持っていなければならず、米国でもまだハーバード大学など、少数の大学病院の小規模ながん治療センターでしか採用されていない。

健康保険制度改革が必要

 また、複数の医師による診察方式を実施すれば、現在診察件数に基づいて算出されている健康保険給付を、患者単位で算出する方式に改める必要があり、一部の医療関係者から疑問の声が上がっているという。これについて長庚医院は、初期段階では余分にかかった診察費用は同病院で吸収し、長期的には患者が自費で疾病センターのサービスを受けたくなるよう予防医療を推進していきたいとしている。

 昨年来台した「患者の利益に基づく医療」の提唱者である、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授は、高齢化社会を迎えて医療コストが増大すると、医療機関は財務負担を抑制せざるを得なくなる結果、誤診など医療の質の低下を招くと主張する。同教授はこのため、専門ごとの縦割りを廃し、患者の医療過程および患者数に基づく保険給付制度の確立を提唱している。

 長庚医院の疾病センターは、いわばポーター教授の理論の実験場ともいえる。同医院は疾病センター以外にも、5月に男性の性機能障害を生理、心理両面から治療する「男性性健康管理センター」を設立し、来年からアジア最大規模の歯科センターを開設することも予定している。