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《復興航空解散》復興航空が突然解散、全路線を運航停止


ニュース 運輸 作成日:2016年11月22日_記事番号:T00067542

《復興航空解散》復興航空が突然解散、全路線を運航停止

 復興航空(トランスアジア航空)は22日、業績悪化を受けて董事会で解散を決定した。2014年と15年に起こした2度の台湾域内線の墜落事故による影響から経営を立て直せず、65年の歴史に幕を下ろす。現在の国際・台湾域内線は22日をもって運航停止とした。全路線の運航停止と解散を前ぶれなく突然決めた手法は、利用者の権益を一切無視した航空会社として前代未聞の非常識といえる。

/date/2016/11/22/00air1_2.jpg記者会見で謝罪する林明昇董事長(22日=中央社)

 解散は復興航空が所属する国産実業集団(ゴールドサングループ)の林孝信総裁、徐蘭英総執行長が協議して決定した。現時点であれば総資産が総負債を上回っているため、解散に踏み切って一段の業績悪化を食い止めるべきと判断した。解散に向けては今後、交通部への申請、株主総会での承認、台湾証券交易所(台湾証券取引所、TWSE)への上場廃止申請のプロセスを経る。

 22日付工商時報などによると、復興航空は、日本、中国路線などでの他社との競争激化や、10月に傘下の格安航空会社(LCC)、威航(Vエア)の運航を停止したことで、今年第1~3四半期の純損失が22億1,700万台湾元(約77億円)に膨らんでいた。第1~3四半期の総資産は228億元、総負債は170億元だが、流動資産は37億2,700万元、流動負債は73億8,300万元で短期的な支払能力を失った中、今月末(29日)に7,500万米ドル規模の海外転換社債(CB)の償還期限を迎える直前のタイミングで解散を決定した。

/date/2016/11/22/transasia_2.jpg

 解散を決めた要因の一つとして、同社の危機を救う新たな出資者が現れなかったこともある。同社幹部は、過去1年に全日本空輸(ANA)、ジェットスターなどと接触したことを認めていた。シンガポール航空、中華航空(チャイナエアライン)傘下の華信航空(マンダリン・エアラインズ)、富邦金融控股などに出資観測が伝えられたこともあったが、結局実現しなかった。

林董事長が謝罪

 復興航空の林明昇董事長は社員宛ての書状を公開し、「皆の努力にもかかわらず赤字経営から抜け出すことができず申し訳ない。やむを得ない決定をせざるを得なかった」と謝罪した。

 しかし、従業員たちにはとまどいが広がっている。ある客室乗務員は「多くの社員が怒っている。社員が事情を知らされるのはいつも一番最後だ」と話した。別のベテラン社員は「会社は家族や子供がいる従業員のことを考えていない。あすからどうせよというのか」と憤った。

/date/2016/11/22/00air2_2.jpg急な運航停止を知らされた利用客に対応する復興航空の地上旅客職員。突然の解散決定に信じられない思いだろう(22日=中央社)

2回の墜落事故で搭乗率低下

 林氏の董事長就任は2010年。その友人は、当初4年はうまくいっていたが、急激な路線開設で人手が不足し、2回の墜落事故で搭乗率が50%以下まで低下したと語った。中華航空の幹部は、14年12月のVエア就航開始を見送っていれば、復興航空は存続できたかもしれないと話した。

 復興航空は、2014年7月に澎湖県・馬公空港付近で着陸に失敗し、乗客乗員48人が死亡した墜落事故に続き、15年2月には台北市・松山空港近くで離陸わずか5分後に基隆河に墜落し、43人が死亡する事故を起こした。

同業には恩恵

 復興航空は、市場シェア20%で台湾3位。▽東京(成田)▽大阪(関西)▽札幌▽函館▽旭川▽仙台──など日本を中心とした国際線や、中国13都市の中台線、台湾域内線を運航していた。

 日本市場は、過去2年の円安で訪日旅行者が増えたものの、日台のフルサービスキャリア(FSC)、LCCがこぞって参入したことで、供給過剰に陥り、減便を迫られている状況だ。復興航空の撤退は、同業他社にとってはプラスとなる。

 一方、中国市場も10社以上が就航しており、激しい競争が繰り広げられている。5月の蔡英文政権への交代以降、中国人観光客が減少しているが、復興航空の上海、杭州線の搭乗率は安定していたため、各社が復興航空の後釜を狙っている。

【表】