ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

ベトナムの台湾紡織メーカー、 米TPP離脱に「影響なし」


ニュース その他製造 作成日:2016年11月28日_記事番号:T00067649

ベトナムの台湾紡織メーカー、 米TPP離脱に「影響なし」

 台湾紡織業界は近年、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を念頭に協定加盟を計画していたベトナムへの投資を強化してきた。TPPを批判する共和党のドナルド・トランプ氏が米大統領選に当選、このほど離脱を明言したため目算が狂った格好となったが、現場からは「大きな影響は受けない」との意外な声が聞こえている。28日付工商時報が報じた。

/date/2016/11/28/tpp_2.jpg

 台湾紡織業界は1990年代よりベトナム進出を積極的に進め、同地の紡織産業振興の主役となってきた。川上・川中の福懋興業(フォルモサ・タフタ)、台南紡織(台南スピニング)、アパレル受託生産の儒鴻企業(エクラット・テキスタイル)、聚陽実業(マカロット・インダストリアル)、広越企業(QVE)などが進出しており、これらの企業は、ベトナムへの新たな進出企業が現れなくなること、それによる需給改善、労働者の賃金インフレの抑制などにTPPが発効しなくなることへのプラス効果を見出している。

 フォルモサ・タフタは現在、ベトナムでのタイヤコードの月産量が1,000トンに拡大、供給先は安定している。また、QVEなど現地アパレル受託生産メーカーに生地の提供も行っており、TPPが発効しなくても業績は引き続き成長するとみている。

 ベトナム進出10年以上で、紡織用繊維の主要供給メーカーとなっている台南紡織は、TPPの後退は市場の需給バランス正常化にとってプラスだと指摘した。

 QVEの呉朝筆総経理は、TPPを見込んで多くのメーカーに進出した結果、ベトナム人労働者の最低賃金が毎年15~18%のペースで上昇を続けたと指摘。TPPが発効しないのであれば、賃金の上昇ペースが緩和されるとの見通しを示した。さらに、対米輸出品は現時点で既に関税優遇を受けているため、TPPが発効してもしなくても大きな差はないと付け加えた。

 生地からアパレル受託生産まで一貫生産を行っているエクラットも、受注も供給も安定しており、TPPの影響は大きくないと表明した。 

米国への進出企業も

 紡織業界では、遠東集団(ファーイースタン・グループ)の傘下の宏遠興業(エベレスト・テキスタイル)が、米ノースカロライナ州での生地・アパレル工場の建設に2,300万米ドルを投じることを決定した。ナイキなどのブランド顧客向けに生産を行う予定で、工商時報はトランプ次期大統領が掲げる製造業の米国回帰に応じた動きとして報じたが、既に8月時点で同州への進出が伝えられており、トランプ氏の当選とは直接関係ないもようだ。

 同紙はまた、「トランプ対策」として台湾メーカーによる市場分散化を挙げ、QVEによる、アルマーニ、バーバリーなど欧州ブランド向けに高級羽毛服を生産するルーマニア企業の買収計画を紹介した。同社はエディー・バウアーや、ナイキのアウトドアカジュアルサブブランドであるハーレーなどの米国企業も顧客としており、トランプ政権下で米国生産に優遇措置が講じられれば米国進出を検討するとの観測も伝えた。

【表】