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蔡トランプ電話会談、台湾重視に安堵感


ニュース 政治 作成日:2016年12月5日_記事番号:T00067785

蔡トランプ電話会談、台湾重視に安堵感

 蔡英文総統とトランプ次期米国大統領が2日、電話会談を持ち、米台の経済、政治、安全保障の緊密な関係を確認したことが米台両政府から発表された。台湾の総統と米大統領または大統領当選者とのホットラインが公にされたのは、1979年の米台断交以降で初めての歴史的な出来事だ。トランプ氏は孤立主義によってアジアへの関与を弱め、台湾の立場を不利にするとの観測もあったが、両者の電話会談によって安堵(あんど)感が広がった。ただ、米国の台湾海峡政策そのものが変更されるとは考えられず、トランプ政権下では米中台の三者関係にきしみが生じることが予想されるため、台湾は情勢の見極めと慎重な対応が求められるとの声が少なくない。

 

/date/2016/12/05/00top_2.jpg電話会談は蔡総統(中)就任以降で最大の成果となった。表情から安心したとの思いが伝わってくる。左は呉釗燮・国家安全会議秘書長、右は李大維外交部長(3日=中央社)

 総統府は3日、蔡総統が2日午後11時(米国時間2日午前10時)、10分間の電話会談を行ったと発表。アジア情勢について意見を交換し、蔡総統は台湾の国際社会への参加に対する支持を求めた。

 電話会談に対し中国の王毅外交部長は3日、台湾は中国の一部とする「一つの中国」の原則に反しており、台湾が小細工を弄したと批判した。中国外交部は正式に米国側に抗議。ただ、全体としてひとまず強い反発は見送っており、トランプ氏の意向を見極める姿勢のもようだ。

 中国の抗議を受けてペンス次期米副大統領は、電話会談は儀礼的なものだと説明。ホワイトハウスは、「一つの中国」の順守に変わりはなく、台湾海峡の平和と安定は米国の利益にも合致すると強調し、事態の沈静化を図った。台湾総統府は、両岸(中台)関係と米台関係は衝突しないと表明した。

「第一列島線」を重視

 トランプ氏は今回、シンガポールのリー・シェンロン首相に先んじて、蔡総統、フィリピンのドゥテルテ大統領と話をしており、中国が対米防衛ラインとして設定する「第一列島線」を重視する姿勢を明確にしたもようだ。また、4日には中国による南シナ海での軍事複合施設建設をツイッターで非難しており、中国に対する批判が目立つ。

 沈呂巡・前駐米代表は蔡・トランプ電話会談について、トランプ氏が台湾を軽視してもよい単なる小島とは考えていないことを示したのが最大の意義と指摘した。中国に対抗する上で、台湾の戦略上の意義を十分に理解しているとの見方だ。

 沈前駐米代表は一方で、台湾は電話会談によって、米台関係が今後ひたすら明るいなどと考えてはならないと警告した。程建人・元外交部長も同意見で、トランプ氏の今後の外交分野での人事と政策、就任後の台湾に関する発言を注視することが必要で、期待し過ぎてはならないと話し、かつて台湾との公式関係を復活させると話していたレーガン元大統領が、就任後そうはしなかった例を引き合いに出した。両者とも米国の長年の「一つの中国政策」が揺らぐことはないとみている。

 国民党はかつて例のない電話会談を評価する一方、同党シンクタンク国家安全組の林郁方招集人が、米国は台湾の独立、中国の台湾への武力行使を望まない立場を変更しないとみられ、トランプ氏も就任後は規定の枠組みの下で判断を下すとの見方を示した。

1月に外遊、新政権高官と接触か

 蔡政権上層部によると、蔡総統は来年1月8日から7泊8日で中米の友好国を訪問する計画がある。米国ニューヨークでのトランジットで、プリーバス首席補佐官らトランプ次期政権の重要人物と面会し、米台関係をさらに固めるものと観測されている。