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海覇王が「一つの中国」支持表明、中国ビジネス対策でやむなし?


ニュース 政治 作成日:2016年12月6日_記事番号:T00067809

海覇王が「一つの中国」支持表明、中国ビジネス対策でやむなし?

 大手海鮮レストランチェーン、海覇王集団は5日、中国時報系列の旺報に「両岸(中台)が共に一つの中国に属することを支持する」とした声明文を掲載した。中国・国務院台湾事務弁公室(国台弁)の張志軍主任が「大陸(中国)で利益を挙げた台湾企業(台商)が、台湾に戻って台湾独立を支持することは許せない」と表明した直後のことで、蔡英文総統ファミリーと関係が近いとのうわさを打ち消し、中国事業への圧力をかわすためにあえて踏み込んだと観測されている。6日付蘋果日報などが報じた。

/date/2016/12/06/00top_2.png海覇王の声明は、かつて奇美実業の創業者で独立派の許文龍氏が、中国の反国家分裂法への支持を表明させられた事件の衝撃を思い起こさせた(グーグル・マップより転載)

 海覇王の荘栄徳グループ総裁は、かつて蔡総統の父親、蔡潔生氏(2006年死去)と親しく、蔡氏から不動産投資の手法を教わった。総統選の選挙戦が行われていた昨年12月、荘総裁は蔡総統の兄、蔡瀛南氏が董事長を務める正中企業から台北市中山北路三段の海覇王レストランのビルを借りている上、正中企業の筆頭株主となっているため「海覇王は蔡氏一族の企業」とのうわさが出回った。蔡総統は当時「単なる大家と店子の関係だ」と釈明していた。

 海覇王は今年4月、成都工場が不当表示を理由に40万人民元(約660万円)の罰金処分を受けた。11月にも広東工場が同じ問題で調査を受けたが、このときは違反は見つからず、処分を受けていない。こうした調査は中国の圧力と疑われており、国家安全局の周美伍副局長も5日立法院の答弁で、海覇王の声明は、同社が中国で税務査察などを受けたことと関係しているとの見方を示した。

 海覇王は声明の中で、来年より広東省従化、汕頭、成都にホテルや冷凍物流センターを設置する中国投資拡大計画を明らかにしており、中国当局から横やりを入れられることを防ぐため「当社は国民党支持(同声明)」とまで表明したとみられる。

経済面で圧力強める

 中国は先月、国民党系の首長を務める台湾8県市に限定して農産物分野の政府・企業団を送り込むなど、経済面で蔡政権に圧力を掛ける戦術を強めており、張主任の発言もその一環とみられる。台商は当局に目を付けられれば税務や環境、労働環境などで査察の名を借りた嫌がらせを受けるため、経営への影響を避けるために沈黙せざるを得ない。

 今回に事態についてシンクタンク、台湾智庫の董立文諮詢委員は「台湾経済は中国に過度に依存してはならないという蔡総統の主張をまさに裏付けている。中国でのビジネスは必ず当局の干渉を受けることを台商は理解しておかねばならない」と語った。

 行政院大陸委員会(陸委会)の張小月主任委員は「粗暴かつ野蛮で、台湾民衆の反感を高める」と中国を批判。総統府は「事態の推移を見守るとともに、台商の権益に影響が出ないよう対策を考えたい」とコメントした。