ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

「湾生」描いて話題の記録映画、原作者の経歴詐称が発覚


ニュース 社会 作成日:2017年1月3日_記事番号:T00068282

「湾生」描いて話題の記録映画、原作者の経歴詐称が発覚

 日本統治時代の1895~1945年に台湾で生まれた「湾生(わんせい)」と呼ばれる日本人が、故郷である台湾を訪れ、生家や幼なじみを探す姿を追ったドキュメンタリー映画、『湾生回家』は一昨年に公開され、台湾全土で感動を呼んだ。しかし、同作品の原作となった書籍の著者で映画版のプロデューサーを務めた田中実加氏に重大な経歴詐称が明らかとなり、作品の内容にも疑いの目が向けられる事態となっている。

/date/2017/01/03/19film_2.jpg『湾生回家』は昨年11月に日本でも上映され、大きな反響を呼んだ。湾生たちの思いは真実だったろうが、今回の騒動で感動もやや割り引かれてしまった感がある(湾生回家フェイスブックページより)

 田中氏はこれまで、20代のころに亡くなった祖母が湾生だったことを知り、その遺灰を生まれ故郷に帰す旅に出たことが人生の転機となったと説明。その後、湾生たちのルーツ探しに尽力するようになり、彼らから聞き取った物語や、故郷再訪の過程を文章に記録して書籍にまとめ、2014年に遠流出版から『湾生回家』として出版したという。

 同書籍は話題を呼び、その年に出版された優れた書籍に贈られる「金鼎奨」を受賞した。同時に彼女は湾生たちへのインタビューや故郷を探し求める過程を収めた映像を基に同名ドキュメンタリー映画を制作。15年10月に公開され、「台湾のアカデミー賞」と称される金馬賞(記録映画部門)まで受賞した。

 しかし、田中氏の経歴については彼女を取材した産経新聞・元台北支局記者の吉村剛史氏(現・岡山支局長)らから疑問の声が挙がり、インターネット上でも矛盾点が相次いで指摘されていた。こうした中、遠流出版の王栄文董事長は1日、田中氏から「日本の血をひくというのはうそで自分は生粋の台湾人だ」と経歴詐称を認める告白を受けたと明らかにした。

 田中氏の声明によると、彼女は高雄市生まれで本名は「陳宣儒」。ただ、これまで祖母としていた湾生の故「田中桜代」さんは実在したと強調した上で、高校時代に偶然出会い、その後学費を援助してもらうなど親密な関係を持ったと説明した。

 彼女の告白を受けて映画版のメガホンを取った黄銘正監督は、ドキュメンタリーの制作を企画した田中氏から提供された資料には疑問点が多く、自ら改めて湾生のインタビューや資料収集を行って撮影したと説明。その内容は真実だと訴えた。

 田中氏が経歴を詐称した理由は不明だが、湾生たちを支援したいという気持ちが本物であったとすれば、自身の行為で彼らを傷つけてしまったことになる。