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一例一休で雇用に悪影響か、ボーナス削減・大量解雇も


ニュース その他分野 作成日:2017年1月4日_記事番号:T00068286

一例一休で雇用に悪影響か、ボーナス削減・大量解雇も

 「一例一休」(法定休日と所定休日を7日間に各1日)方式による週休2日制導入などの改正労働基準法(労基法)は、物価上昇を招くだけでなく、企業が支給する春節ボーナス(年終奨金)など賞与に影響し、従業員のモチベーションを左右するとの見方が、中華経済研究院(中経院、CIER)の呉中書院長から示された。値上げや人員配置の見直しのほか、春節(旧正月、2017年は1月28日)明けに大量解雇を行い、正社員を派遣社員や臨時社員に置き換える企業も出ると懸念されている。呉院長らは、業種ごとの違いを考慮し、柔軟に運用すべきと提言した。中央社などが4日報じた。

/date/2017/01/04/00top_2.jpg労働団体は3日、労働部に対し、政策の不備について説明を求めた(3日=中央社)

 呉院長は、世界には経済発展の度合いにより休暇の多い国も少ない国もあるが、台湾は週休2日制導入に当たって、企業の経営、労働者の権益を守るとの基本方針を忘れずに柔軟に運用すれば、転換期を乗り越えられるとの認識を示した。一方で、十分な補完措置を設けないまま週休2日制を実施すれば、負担が増大すると指摘した。

 呉院長はまた、台湾は対GDP(域内総生産)比で製造業が3割、サービス業が6割と先進国ほどサービス業の比率が高くなく、依然として製造業に依存していると指摘。特に受託生産が中心で、労働者は重要だと述べた。

 中華採購供応鏈管理協会(smit)の頼樹鑫執行長は、これまで原料価格が上昇しても値上げできなかった業者が、週休2日制を理由に値上げに踏み切り、消費者は短期的に負担を強いられると指摘。ただ、人件費の上昇は、製品やサービスの効率、付加価値の向上をもたらす契機となり得ると述べた。

 中央研究院(中研院)経済研究所の簡錦漢所長も、低賃金、過労が問題となる中、労働者の権益改善は製造業とサービス業の質向上にもつながり、産業界にとって悪いことではないと指摘。ただ、労働政策には柔軟性が必要と釘を刺した。

実質賃金が低下

 自由時報は、時間外労働に対する割増賃金の増額などで、労働者は残業代を稼ぎたくても企業に認められず、派遣社員に仕事を奪われる可能性があると懸念を示した。さらに、休暇が増えるのに物価は上昇し、残業手当が減少すれば、実質賃金が減るに等しいと指摘。政府が何の補完措置も用意していないため、労使ウインウインどころか、誰も得しない法改正だと批判した。

 郭国文・労働部次長は、派遣社員が搾取されることがないよう、同一労働同一賃金に関する規定を派遣労働者保護法に盛り込むことを検討していると述べた。

中小企業、倒産・失業の危機

 全国中小企業総会は11日に林全行政院長と座談会を開き、中小企業の深刻な状況を訴える予定だ。林慧瑛理事長は、残業手当が大幅に増えるので、企業が従業員に必要な残業もさせず、期限までに出荷できなくなって顧客の不満を招くなど、サプライチェーンが大混乱していると語った。従業員5人以下の零細企業は交代勤務もできないので、週末は出荷を断念するしかなく、事業継続さえ困難だと話した。

 中小企業にとって週休2日制の負担は大きく、倒産に陥れば大量の失業者を生み出す恐れがある。