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228事件の完全究明と責任明確化、蔡総統が方針


ニュース 社会 作成日:2017年3月1日_記事番号:T00069193

228事件の完全究明と責任明確化、蔡総統が方針

 国民党政府が戦後間もない1947年に台湾住民を弾圧した「228事件」から70年を迎えた28日、蔡英文総統は事件の完全な究明を進め、責任の所在を明確化する考えを示した。国民党独裁政権時代の人権侵害事件で、被害者の名誉回復を進める「転型正義」の目的は和解であり、特定の族群(エスニックグループ)に対する闘争ではないと説明した上で、和解のためには真相が不可欠との考えを強調した。1日付蘋果日報などが報じた。

/date/2017/03/01/00top_2.jpg台北市では228事件の現場となった場所を市民らが歩き、犠牲者と遺族の悲しみに思いを馳せた(27日=YSN)

 蔡総統は台北市の228紀念公園で開かれた犠牲者の追悼式典に参加。政府の文書を管理する国家発展委員会档案管理局(NAANDC)が1日より、台湾全土の行政機関に保存されている228事件および白色テロ時代の資料を精査して、「国家転型正義調査報告」をまとめ、事件の責任の所在の明確化に取り組むと説明した。

 蔡総統は、かつて国際ホロコースト記念日のイベントに参加した際、ドイツとイスラエルの代表者が、犠牲になったユダヤ人に共に祈りを捧げるのを見た体験を引き合いに、「これこそが台湾の転型正義のモデルだ」と語った。そして「将来、真相が完全に明らかになり、加害者が謝罪を願い、被害者と遺族もその受け入れを願う日が来ることを希望する」と訴えた。

事件の責任、曖昧なまま

 国発会はこれに先立つ26日、档案管理局が保管する228事件関連の文書は約137万ページに上ること、および機密扱いだった文書4,617件の機密を解除したことを明らかにした。膨大な量だが、林全行政院長は精査と整理を3年で終わらせるとの目標を示した。

 蔡総統が改めて真相解明を強調したのは、李登輝元総統が1995年に初めて政府として謝罪し、以後の陳水扁元総統、馬英九前総統も謝罪、犠牲者の名誉回復、遺族への補償金給付が進められてきたものの、事件の責任の所在が曖昧なままにされてきたことがある。このため、事件の「元凶」とされる蒋介石元総統の責任を問う声は依然やまず、今年も基隆市や新北市新荘区の輔仁大学で、蒋元総統の銅像が電気のこぎりで傷つけられるなどの事件が起きた。228事件紀念基金会の楊振隆執行長は「蒋元総統が加害者だとした、当会が10年前にまとめた報告書を政府が認定し、各地の蒋介石像を撤去してこそ転型正義が実現する」と語る。

/date/2017/03/01/00top2_2.jpg台南市では、事件で犠牲になった日台混血の湯徳章弁護士の胸像に、鎮魂のユリの花が手向けられていた(28日=YSN)

「蔡政権の重荷に」

 蔡総統の真相究明方針に対して、ちょうど事件の責任に関する書籍を出版した中央研究院近代史研究所の陳儀深副研究員は「調査報告をまとめ上げるまでに時間がかかり過ぎて、蔡政権の重荷となってしまう恐れがある」との見方を示した。資料で責任をどの程度明らかにできるかについて「犯罪を犯した人に罪を認めさせるほど完全なものができるかは、恐らく困難だろう」と述べた。

 また、朱浤源研究員は「当時、大陸(中国)からやってきた、台湾人エリートたちを知らない軍隊がなぜ彼らを一掃できたのか。それは台湾人の密告があったためで、そうした例は多い。資料によって蒋元総統の『潔白』が証明されることもあり得る」と懸念を示した。

「外省系住民に原罪」

 国民党寄りの聨合報は28日付社説で、民主化以降の真相究明の努力によって事件の概要はほぼ明らかになっているのに、この上さらに調査を進めれば、新たに社会の分裂と対立を作り出し、特に外省系住民に拭い難い原罪を負わせると蔡政権の方針を批判した。世代を超えて政治的追及が続くことで、台湾社会の和解はより困難になるとしている。

 蒋元総統の評価について馬前総統は27日、「当時の国家指導者として228事件には当然責任がある。ただ、彼は近代中国の指導者として抗日戦争、台湾収復と防衛、経済建設に大きな貢献をしたことは確かだ。功績と過ちが共に正しく認識されるべきだ」と指摘した。