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運送業に8週変形労働時間制適用へ、繁忙期の人手不足に対応


ニュース 運輸 作成日:2017年3月17日_記事番号:T00069524

運送業に8週変形労働時間制適用へ、繁忙期の人手不足に対応

 労働部は、宅配業者などの貨物自動車運送事業を8週間単位の変形労働時間制の対象業種に追加する労働基準法(労基法)施行細則の改正を検討する。7日ごとに1日の法定休日(例假)は必要だが、所定休日(休息日)を別の週に移動して6日連続勤務が可能になる。物流業界は、春節(旧正月)など繁忙期に一定の効果があるが、週休2日制(一例一休)導入による人手不足や時間外労働手当の増額など人件費上昇の根本的解決にはならないと指摘した。17日付蘋果日報などが報じた。

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 労働部は17日から14日間、各界から広く意見を募り、3月末に公告する予定だ。8週間単位の変形労働時間制に新たな業種を追加するのは2003年10月以来、約14年ぶりとなる。

 労働部は、運送業者から春節などの配達が増える繁忙期は労働力が不足し、需要期が終われば業務量が減少するので、8週間単位の変形労働時間制を適用してほしいと要望があったと説明した。事業者が実際に8週間単位の変形労働時間制を導入するには労使協定が必要となる。

 労働部によると、8週間単位の変形労働時間制は「8例8休」で、7日ごとに1日の法定休日、8週間で8日の所定休日を与えなければならない。8週間の法定労働時間は320時間で、1週48時間の労働も可能だが、7日以上の連続勤務はできない。

 一例一休と違い、6日連続勤務としても、所定休日を別の週に移動させれば、高額な時間外労働手当を支給せずに済む。前半6週は6日連続勤務とし、最終週に所定休日をまとめて9連休(うち1日は法定休日)とすることも可能だ。

運送業界、冷静な反応

 「クロネコ宅急便」の統一速達(プレジデント・トランスネット)は、週休2日制を導入しているので、特に影響はないと指摘した。

 台湾順豊速遞(S.F.エクスプレス)は、企業向けのB2Bで土曜の配達は少ないため、導入するかは要検討とした。

 嘉里大栄物流(ケリーTJロジスティクス)は、繁忙期に柔軟なシフト体制を組めるようになるが、やはり一例一休による人手不足や人件費上昇は避けられないと指摘した。

労働団体、来週にも抗議

 物流業労働権益自救会の曽堉誠会長は、運送業の労働時間は今でも十分長いので、6日目の勤務は疲労がたまっていると指摘。これでは抜け道を作っただけで、来週にも労働部に抗議に出向くと表明した。

 労働法を専門とする中国文化大学法律系の邱駿彦教授は、配達ドライバーの疲労がたまり、注意力が低下すれば、交通事故が起きやすくなるとして、運転する仕事は変形労働時間制を適用しない方がよいと提言した。また、企業はシフトを組みやすくなり、高額な時間外労働手当の支給を免れることができるが、労働者にメリットはないと批判した。

労働者7.6万人に影響

 交通部の統計によると、貨物自動車運送事業の被雇用者は7万6,000人余り。月平均労働時間(残業含む)は184時間と全業種平均の175.3時間より長いが、平均月給は3万3,468台湾元(約12万4,000円)と、全業種平均の4万8,490元より低い。

 8週間単位の変形労働時間制は▽製造業▽建設業▽観光バス業▽郵政業▽卸売・小売業──など60業種余りに適用されている。1日の法定労働時間は8時間。2週間単位、4週間単位の変形労働時間制なら、1日の法定労働時間を10時間に拡大できる。

【表】