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TSMC3ナノ米国生産も、台湾の環境・電力を問題視


ニュース 電子 作成日:2017年3月20日_記事番号:T00069550

TSMC3ナノ米国生産も、台湾の環境・電力を問題視

 20日付経済日報によると、ファウンドリー世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は3ナノメートル製造プロセスで米国への工場設置を検討しているもようだ。投資額は5,000億台湾元(約1兆8,500億円)で、2022年の量産開始予定。消息筋によると、南部科学工業園区(南科)高雄園区路竹基地は環境影響評価(環境アセスメント)に時間がかかる上、脱原発化に伴い電力供給の不安定化が懸念され、計画通り生産を開始できない恐れがあるためだ。

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 張忠謀(モリス・チャン)董事長は1月の第1四半期業績説明会で、「米国投資の可能性も否定しない」と語っていた。魏哲家・共同執行長は2月のサプライチェーン管理フォーラムで、工場用地について検討していると述べており、その後3ナノプロセス工場の候補地として米国を検討し始めたようだ。

 TSMCのサプライヤーは、科技部が確保を支援できる南科高雄園区の用地(50ヘクタール余り)なら、22年の量産開始計画までに環境影響評価の審査が間に合わない恐れがあると指摘した。さらに、南科高雄園区は大気の質が良くない上、政府の脱原発推進で電力供給にも懸念があると語った。

 TSMCは、環境影響評価、大気汚染、電力供給はいずれも工場建設を検討する上で、重要な要素だと認めた。

供給網に緊張感

 TSMCが実際に3ナノプロセス工場の米国投資を決めるならば、同社にとって台湾での投資が厳しいことを意味する。その場合、中国投資は最先進プロセスより1世代遅れた「N-1」規定があるものの、今後の生産能力拡張は中国で行う可能性がある。台湾で構築されたサプライチェーンは対応を迫られる。

 行政院の高官は19日、TSMCの3ナノプロセスをはじめ、大型投資は経済部が窓口となり、5億元以上の計画は、問題があれば林全行政院長にも報告すると説明。行政院から環境保護署(環保署)に環境関連の審査期間短縮を要請すると語った。

アップル「A11」、Q2量産へ

 一方、TSMCの5ナノプロセスは南科で19年下半期に量産を開始する計画だ。7ナノプロセスは今年4月に試験生産、5月から年内に製品12種、1年で20種をテープアウト(設計完了)する予定だ。主な生産拠点は中部科学工業園区(中科)。

 10ナノプロセスは新竹科学工業園区(竹科)、中科で量産に入っている。顧客は聯発科技(メディアテック)、深圳市海思半導体(ハイシリコン・テクノロジーズ)、クアルコムなど。業界関係者によると、アップルが今年発売するとみられるスマートフォン、iPhone8のA11プロセッサーも第2四半期に量産を開始するもようだ。

 EEタイムスの報道によると、TSMCの今年の出荷見通しは前年比10%増の1,100万枚(12インチウエハー換算)。最多は28ナノプロセスで200万枚、伸びが最も大きいのは10ナノ以降の先進プロセスだ。TSMCは、今年の10ナノプロセス生産は40万枚、19年には10ナノプロセスと7ナノプロセス合計で120万枚と予想している。

12ナノ、メディアテックから受注か

 TSMCは今年下半期に、16ナノプロセスFinFET(FF、立体構造トランジスタ)を微細化した12ナノプロセスをリリースする。人工知能(AI)や自動運転車などの分野で需要が好調な画像処理半導体(GPU)大手のエヌビディアがTSMCの12ナノプロセスで唯一の顧客だったが、メディアテックも発注を検討しているようだ。

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