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TSMC董事長「3ナノ台湾優先」、政府は全力支援表明


ニュース 電子 作成日:2017年3月21日_記事番号:T00069576

TSMC董事長「3ナノ台湾優先」、政府は全力支援表明

 ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が3ナノメートル製造プロセスで米国への工場設置を検討しているとの報道を受け、陳良基科技部長は同日、TSMCに照会し、張忠謀(モリス・チャン)董事長から「台湾投資が優先で、米国投資の計画はない」との回答を得た。報道では環境影響評価(環境アセスメント)や電力供給など台湾の投資環境が問題と指摘されており、台湾政府は同日、全力支援を表明した。業界関係者は、政府に圧力をかけて、環境や水・電力供給で有利な条件を引き出す狙いと指摘した。21日付経済日報などが報じた。

/date/2017/03/21/00tsmc_2.jpg邱・科技部産学園区業務司長は20日の記者会見で、台湾にとってTSMCはわが子のように重要で、台湾産業を世界に導く役割があると述べた(20日=中央社)

 TSMCは、台湾への投資を優先して検討しており、工業用水、電力、用地、人材は工場建設の重要な要素だと指摘。来年上半期まで検討作業は続くと説明した。投資額は5,000億台湾元(約1兆8,000億円)。

スムーズな審査見通し

 邱求慧・科技部産学園区業務司長は、科技部はTSMCと交流があり、19日も陳科技部長が張董事長と10分間電話し、台湾投資が優先と確認した

と話した。用地、工業用水・電力、環境影響評価、人材や先端技術など、科技部は全力で支援すると述べた。

 行政院環境保護署(環保署)の詹順貴副署長は、大気汚染物質排出の総量規制に関しては、中央政府と地方政府が支援するが、TSMCは従来より問題が少なく審査期間も長くはかからないと述べた。環境影響評価も、もし南部科学工業園区(南科)高雄園区路竹基地ならば状況を把握している上、TSMCは従来のデータが明確だったので、審査は2カ月半で通過すると見通しを示した。

 李世光経済部長は、TSMCの3ナノプロセス量産予定は5年後で、現在の計画では工業用水・電力供給は対応できるが、もし発電所建設が遅れれば電力供給が逼迫(ひっぱく)する恐れがあると語った。台湾電力(台電、TPC)は今後5年で林口、通霄、大林など大型火力発電所の発電機を更新し、大林、台中火力発電所や第1原発(新北市石門区)、第2原発(同市万里区)など閉鎖が相次ぐ予定だ。

サプライチェーン断絶の懸念

 工業技術研究院(工研院)産業経済趨勢研究センター(IEK)の楊瑞臨・主任室計画副組長は、TSMCの3ナノプロセス工場を台湾に引き留められなければ、半導体業界のサプライチェーンが断絶すると警告した。

 3ナノプロセスはムーアの法則(半導体の集積密度は18~24カ月で倍増する)の限界と考えられるほか、高性能計算(ハイパフォーマンスコンピューティング、HPC)ができる大型コンピューターやデータセンターに使われ、2023年には5G(第5世代移動通信システム)対応スマートフォンに使われる可能性があると予測した。これに続く1ナノ以降の量子コンピュータ技術や材料は、高性能計算や人工知能(AI)に必要となり、半導体産業のエコシステム(ビジネスの生態系)を変えると指摘した。

産業空洞化を警告

 経済日報は社説で、TSMCの米国投資検討の観測は台湾の投資環境問題が背景にあり、台湾企業の流出防止、海外企業の誘致のために投資障壁の改善が必須と訴えた。

 例として台塑集団(台湾プラスチックグループ)の第6ナフサ分解プラント(通称六軽)拡張計画を挙げ、審査の期間があれほど長引けば、TSMCは世界と戦えないと指摘。また、2025年の脱原発化に向け、再生可能エネルギーによる発電量の割合をわずか9年で20%(16年5.5%)に急拡大することで、用地不足、資金不足だけでなく、電力供給不安も投資障壁に加わると指摘した。