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台湾人材の海外流出深刻、10年で2倍に


ニュース その他分野 作成日:2017年4月5日_記事番号:T00069811

台湾人材の海外流出深刻、10年で2倍に

 実質賃金が伸び悩む中、海外で働く台湾人が過去10年で2倍以上に増加した。海外就業者数72万4,000人のうち、男性が56.1%とやや多く、大学や専科学校(単科大学・高専に相当)卒業以上が72.52%を占めるなど、質の高い人材が海外に流出する傾向がうかがえる。5日付中国時報は、海外で働いていても就業者数にカウントするため、台湾の失業率改善は見せかけにすぎない可能性があると、人材空洞化に警鐘を鳴らした。

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 主計総処が05年の調査開始以来で初めて発表した統計によると、2015年の海外就業者数は前年比0.27%減の72万4,000人で、うち中国での就業は1.71%減の42万人と、構成比が58%に縮小した。主計総処は、近年の中国の賃金上昇が対中投資意欲に影響しているためと説明した。主計総処(当時は主計処)は05年時点で、海外就業者数は34万人で、うち29万人(構成比85%)が中国で働いていると説明していた。

 統計によると、東南アジアでの15年就業者数は前年比1.33%減の11万1,000人(構成比15.4%)と、09年の7万7,000人より大幅に増えた。次いで米国が7.04%増の9万2,000人(構成比12.74%)だった。日本、韓国、豪州などその他地域は0.75%増の10万人(構成比13.86%)だった。

 国家発展委員会(国発会)人力発展処の謝佳宜副処長は海外就業者数の増加傾向について、海外の労働条件が台湾に勝っているためと指摘。蔡英文政権が推進する経済政策「5+2創新産業計画」で就業機会を創出し、人材引き留めを図ると表明した。

中~高度人材の待遇が課題

 主計総処の統計によると、07~16年の賃金上昇率は1.3%だが、消費者物価指数(CPI)上昇率が1.2%で、実質賃金上昇率は0.1%にとどまる。87~96年平均は5.9%(賃金上昇率9.3%、CPI上昇率3.2%)、97~06年平均は0.9%(賃金上昇率1.7%、CPI上昇率0.8%)と、賃金上昇率とCPI上昇率の差が縮小している。

 米タワーズワトソンの給与調査によると、台湾の初級技術専門職の給与は中国や東南アジアより高いが、中~高度の管理職の給与は中国、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピンを下回る。

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 オックスフォード・エコノミクスの調査レポートによると、台湾は21年に人材流出が世界で最も深刻となり、流出する10人に6人が専門人材の見通しだ。

 中国時報は、失業率は戸籍から抽出された2万人の就業の有無を基に算出しており、北京や上海、ホーチミンなどで働いていても就業者数に含まれるので、失業率の低下が台湾の景気回復を意味するとは限らないと指摘した。これを踏まえ、今後は海外での就業状況についても調査すべきと政府に提言した。

【図】