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平渓の天灯飛ばし、観光と環境問題で地元住民も賛否


ニュース 社会 作成日:2017年4月10日_記事番号:T00069915

平渓の天灯飛ばし、観光と環境問題で地元住民も賛否

 紙製のランタン(天灯)に願い事を書き、熱気球のように火を灯して空に飛ばす天灯飛ばしは、人口5,000人足らずの新北市平渓区にとって、年間64万人の観光客を呼び込み、商機1億台湾元以上をもたらす重要な観光資源だ。ただ、飛ばした天灯の一部が回収されず、山林や河川のごみと化しているほか、火災の原因になると批判が出ている。天灯飛ばしを生活の糧とする地元住民と、そうでない住民の間でも賛否が分かれており、観光収入と環境保護のバランスが課題となっている。

/date/2017/04/10/20lantan_2.jpg中国語だけでなく、英語や日本語など世界各国語で願い事が書かれた天灯が空に放たれている(新北市政府観光旅遊局リリースより)

 天灯飛ばしはもともと、元宵節(旧暦1月15日)に1年の豊作を祈願するために行われていた。市政府が1999年から元宵節に天灯フェスティバルを開始したことで注目され始め、今や元宵節以外でも観光客の体験イベントとして定着している。日本や韓国、タイなど海外からの個人旅行者にも人気が高く、新北市政府観光旅遊局の統計によると、2016年に平渓を訪れた観光客は延べ64万人で、12年の15万人、14年の33万人から倍々ゲームで増えている。業者によると、平渓の天灯飛ばしは元宵節の2日間で1万5,000個に上り、年間の販売数は100万個を数える。一方、飛ばした天灯の回収数は昨年20万185個にすぎない。

 天灯製作50年以上の職人は、平渓の天灯販売業者は50社以上で、約500人が従事しており、人口の約10分の1に相当する立派な産業だと強調した。地元住民は、炭鉱の町だった平渓は石炭産業の衰退により多くの人口が流出したが、天灯飛ばしのおかげで天灯製作者に安定収入がもたらされ、商店は観光客向けの商売ができるようになったと語った。もし天灯飛ばしがなくなれば、こんな田舎には誰も観光に来ないと訴えている。

 一方、天灯飛ばしと無関係の仕事を営む地元住民からは反対の声もある。ある農業従事者は、天灯の残骸が農業の邪魔になるし、もし飛ばした天灯が民家に落下すれば火事になると語った。平渓出身の女性は、子供のころには天灯飛ばしの習慣などなかったのに、今は天灯が頻繁に飛ばされていて、危険なのでやめてほしいと話した。

 静宜大学観光事業学系の呉政和教授は、天灯飛ばしは地元の風習や文化と結び付けて生み出された観光資源で、台湾に国際観光客を呼び込むために、ぜひとも残すべきだと語った。ただ、天灯飛ばしの規模を制限したり、自然界で分解される材料を使うなど対策が必要だと述べた。

 天灯飛ばしは昨年、米ナショナルジオグラフィック誌の「訪れるべき冬の観光スポット世界10選」に初めて選ばれるなど、世界中から注目されている。台湾のリピーターを増やすためにも、なんとか共存の方法を見つけ出してほしいものだ。