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生命維持装置、台湾は利用世界一


ニュース 社会 作成日:2017年4月13日_記事番号:T00069997

生命維持装置、台湾は利用世界一

 陽明大学附設医院の陳秀丹医師によると、台湾では人工呼吸器に依存する患者の数が米国の5.8倍に上るほか、生命維持装置として使用される体外式膜型人工肺(ECMO)の使用が全世界の半分を占めるとされる。これは回復の望めない患者を機械に頼って生き長らえさせるケースが台湾では多いことを意味し、各界から生命の尊厳について見つめ直す必要があるとの声が上がっている。

 衛生福利部(衛福部)の統計によると、全民健康保険の昨年の医療給付金の総額は5,656億台湾元で、うち長期にわたる人工呼吸器の使用向けが約120億元で全体の2%を占めた。また人工呼吸器を21日以上使用した患者の数は1万6,902人に上り、1人当たりの医療給付は約71万元となった。最も長期間にわたり同装置を使用したケースは、出産の際に医療事故に遭った女性で、2003年から16年までの14年間、ベッドに寝たきりだったという。

 また台湾では昨年、計1,701人が1人当たり7.9日間、ECMOを使用した。同装置は救急患者の緊急手術などにも使用されるが、治療法がなく、回復が望めない患者を死なせないためだけに利用されることもある。昨年の最長使用期間は116日で費用は約202万元だった。

 人工呼吸器に頼って生命を維持する場合、患者の体には気管内チューブや気管切開チューブ、点滴チューブ、鼻腔栄養チューブ、導尿カテーテル、人工透析用チューブなどさまざまな管が取り付けられ、まるで終着点に向かおうとする命を縛り付けるような様相を呈する。

 こうした状況に対し陳医師は「人工呼吸器に頼って生命を維持する患者を見ると心が痛む」と語り、医師や市民は患者にとって最も良いことは何なのかを考え直す必要があると指摘した。そして、毎年100億元もの健康保険費用を投じながら、本当に患者のためになっているか、終末の苦痛を長引かせているだけではないかと問題を提起した。

 このほか、中華民国重症医学会の唐高駿名誉理事は、回復の望みのない患者の生命を維持し続ける理由について、家族があきらめ切れないこと、医師が患者を救うことが使命と教育されていることなどが考えられると指摘。その上で現時点では、アドバンス・ケア・プランニング(患者が将来の意思決定能力の低下に備え、医師や家族と治療の目的などを話し合うこと)に従って決定を行う以外に、生命維持の中止を決定することは「親不孝」には当たらないとの考えが社会的な共通認識となるよう、啓蒙(けいもう)に努めるしかないとの考えを示した。

 なお、人工呼吸器に依存する患者の数は過去2年間で約6,000人減少しており、台湾人の意識も変化しつつあるようだ。