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日本統治時代の石碑損壊相次ぐ、八田與一像事件が影響か


ニュース 社会 作成日:2017年5月16日_記事番号:T00070554

日本統治時代の石碑損壊相次ぐ、八田與一像事件が影響か

 台北市士林区の芝山公園にある、日本統治時代初期に起きた芝山巌事件にまつわる「故教育者姓名碑」の2体の石碑が、いずれも赤ペンキで大きなバツ印を落書きされたことが分かった。北投区では日本語で「台湾よ永に幸なれ」と彫られた「台湾幸福石」、および「弘法大師碑」が鈍器のようなものでたたかれ、一部の文字が不鮮明になっていることも分かった。日本に反感を持つ人物が、八田與一(よいち)氏の銅像の首が切断された事件に影響を受けて、日本統治時代の石碑に相次いで損壊行為を働いている可能性がある。16日付自由時報が報じた。

/date/2017/05/16/00rokushi_2.jpg今日の日台関係の礎を築いた先人たちの事績が否定されるのは残念だ(台湾歴史学者・蕭文杰氏提供)

 芝山巌事件は1896年の元日に起きた抗日ゲリラによる日本人教師への襲撃殺害事件で、日本人教師6人(六氏先生)が殺害された。1930年、台湾総督府によって「芝山巌神社」が創建され、殉死した六氏先生をはじめ、台湾での教育に殉じた人々が祭られ「台湾教育の聖地」と称された。終戦後、芝山巌神社は国民党政府によって破壊されたものの、跡地の芝山公園は今でも台北で日本統治時代を代表する場所の一つだ。

 今年は228事件70年を迎えた3月以降、独立派グループによって台北一帯で蒋介石銅像の首が切られる事件が相次ぎ、4月中旬に起きた八田與一像の破壊はこれに対する報復とみられる。八田像が破壊された後、洪秀柱国民党主席の選対本部広報担当者の陳茂嘉氏は「孫文や蒋総統の銅像が再び壊されるようなことがあれば、鳥居や日本人の銅像を取り除く」と発言した。今回「故教育者姓名碑」に落書きした者は、八田銅像の破壊事件や、こうした発言に影響を受けた可能性がある。

 台北市文化局は今回の事件について「落書きなどの対象になったものは全て文化財としての指定がなく、罰することはできない」と表明した。一方、「故教育者姓名碑」を管理する台北市公園処は、公共物の損壊に当たり、2年以下の懲役または500台湾元(約1,900円)の罰金に相当するとの立場だ。

「良好な日台関係の反動」

 台湾日本人会の前総幹事で日台交流の活動に取り組む山本幸男氏(68)は事件について「日本統治時代について前向きな評価がされてきている中、非常に残念で悲しいことだ」と述べた。また、一般的な台湾人の対日感情は良好なものの、台湾に住む日本人として気を付ける必要があるとコメントした。

 歴史学者の李筱峰・台北教育大学教授は、蔡英文総統が進める「転型正義(転換期の正義)」に反感を持つ、かつて反日教育を受けた世代の仕業ではないかと推測。日台関係が良好になればなるほど、ごく一部の反日感情を持つ者たちが過激な行為を働くことが予想されると話し、今後同様の事件が起こる可能性も示唆した。