ニュース 政治 作成日:2017年5月18日_記事番号:T00070607
南太平洋の島国、フィジーが台湾に置いていた「貿易観光代表処」を今月10日までに撤去していたことが分かった。世界保健機関(WHO)の年次総会(WHA)に9年ぶりに招待されなかったこと、新南向政策で重要ターゲットのベトナムが「一つの中国、台湾独立反対」を盛り込んだ中越コミュニケに署名したことを含め、蔡英文政権発足1周年を前に台湾外交の苦境ぶりが鮮明になっている。
蔡総統にとっては残念なことに、現状は「民進党の路線では国際組織への参加は不可能になる」との馬前総統が昨年述べた予言通りの展開になっている(中央社)
18日付中国時報によると、フィジーの代表処撤去に当たって、外交部は1~2人の人員を残すよう求めたものの拒否され、「完全撤去」になったという。フィジーは一方、バイニマラマ首相が北京で開かれた一帯一路フォーラムに参加、16日に習近平中国国家主席と会談して、「一つの中国政策」の堅持を表明した。
フィジーは中国と国交を持ち、台湾とは正式な外交関係はないものの相互に国家としての地位を承認し、台湾はフィジーの首都に「中華民国商務代表団」を置いている。国交のない国に「中華民国」を冠した代表機関が置かれるケースは珍しく、フィジーは長年、台湾の友好国だったと言える。呉志中外交部次長は、フィジーの台湾代表機関撤去は「経費の問題による判断だと信じている」と述べ、ショックをうかがわせた。一方、台湾の在フィジーの「商務代表団」は撤去しない考えを示した。
相次ぐ後退
蔡政権発足以降、昨年12月にアフリカのサントメ・プリンシペと断交し、台湾が正式な外交関係を持つ国は21カ国に減少した他、今年1月にはナイジェリアで台湾代表処が名称変更と首都からの移転を迫られた。そして今月、WHAにオブザーバーとして参加できないことが確定し、台湾外交の後退が誰の目にも明らかになった。
馬英九前政権時代は「1992年の共通認識(92共識)」の下、中台間で承認国の獲得競争を中止することで合意し(外交休兵)、台湾はWHA以外にも、国際民間航空機関(ICAO)総会への参加を果たした。しかし、92共識を承認しない蔡政権への交代で外交休兵は終わり、最近は中国による攻勢が強まっている。
日米の支持表明、効果なし
WHA参加問題では、米国や日本、カナダなどが台湾の参加への支持表明を行ったが効果を生まなかった。こうした中、「日米と連携して中国に対抗する」という蔡外交の基本戦略が時代遅れになっており、中国との関係改善に取り組むべきとの指摘が挙がっている。世界2位の経済大国となった中国は全世界から重視されており、独裁政治の覇権国家とはいえ、台湾が「正義」を強調しても振り向いてくれる国はほぼない。就任前に蔡総統と電話会談を行ったトランプ米大統領が、米中首脳会談の後、台湾との再度の電話会談はないと表明したケースがその好例だ。
ギャロップが最近行った世論調査によると、「日米と連携して中国に対抗」は台湾にとって不利との回答は62.4%に上った。日米も影響力を高めた中国との関係を重視する中、民進党の外交路線は以前に比べて訴求力が減退し、不信感を生んでいるようだ。92共識の創始者で、馬政権で国家安全会議秘書長を務めた蘇起氏は台湾外交の苦境に対し「蔡政権はメンツにこだわって台湾の発展を抑えるべきではない。変えるべきところは変えるべきだ」と路線見直しを訴えた。
蔡政権は2年目、中国による一段と厳しい外交圧力にさらされるとみられる。同時に「対中政策をより柔軟にして実利を取るべき」という世論のさらなる高まりが予想され、蔡総統にとって厳しい局面が続きそうだ。
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