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台湾製造業の海外移転、ピーク過ぎる


ニュース その他製造 作成日:2017年6月3日_記事番号:T00070875

台湾製造業の海外移転、ピーク過ぎる

 台湾経済の課題である製造業の海外移転がピークを過ぎたようだ。経済部統計処の2日発表によると、製造業の2016年売上高24兆1,739億台湾元(約88兆6,000億円)のうち、台湾での生産比率は56.2%と前年比1.4ポイント上昇した。王淑娟副処長は、ファウンドリー大手が海外スマートフォンブランドからプロセッサーを単独で受注したことや、一部の電子部品メーカーによる台湾への生産回帰を理由に挙げた。3日付経済日報などが報じた。

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 ファウンドリー大手によるスマホ向けプロセッサー受注とは、アップルが今秋発売するとみられる次世代スマホiPhone8に搭載するプロセッサー「A11」を台湾積体電路製造(TSMC)が受注したことを指すとみられる。

 台湾では近年、東南アジアやインドとの関係強化を目指す蔡英文政権の「新南向政策」推進に加え、▽米国政府による製造業の国内回帰(リショアリング)推奨▽中国政府の自製率引き上げに向けたいわゆる紅色供給網(レッドサプライチェーン)台頭──など、メードイン台湾(MIT)を阻む要素が多く、産業界から投資環境の改善を求める声が絶えない。こうした中、意外にも昨年の台湾生産比率が上昇した。16年輸出受注総額の海外生産比率も54.2%と、15年の55.1%より低く、99年の統計開始以来で初めて下落に転じている。

 また、製造業の16年製品販売先も台湾が構成比32.8%と前年比1.4ポイント上昇した。東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが8.3%と1.1ポイント上昇した一方、中国向けは14.7%と0.5ポイント下落した。

 このほかは、▽北米、20.9%(前年比0.3ポイント上昇)▽欧州、13.4%(1.9ポイント下落)▽日本、3.8%(0.4ポイント上昇)──だった。

Q1売上高、6兆元を回復

 統計によると、製造業の今年第1四半期売上高は前期比12.2%減、前年同期比7.2%増の6兆2,161億元と、2四半期連続のプラス成長で6兆元台を回復した。王副処長は、昨年上半期は景気が低迷したが、下半期から回復し始め、製造業の売上高も徐々に改善していると指摘した。

 業種別では、最多のコンピューター電子光学製品業が2兆306億元で前期比24.5%減、前年同期比1.9%増だった。次いで電子部品業が1兆2,663億元で前期比8.6%減、前年同期比9.8%増と、3四半期連続のプラス成長だった。王副処長は、ノートパソコン、サーバー、モバイル端末などの組み立てメーカーや大型パネル向け部品などサプライチェーンの売上高が増えたためと説明した。

 化学材料業は4,817億元で前期比2.5%減、前年同期比17.6%増。石油と石炭製品業は4,018億元で前期比9.7%増、前年同期比36.9%増と、過去7年で最高の伸びだった。

 このほか、▽ベースメタル業、3,132億元(前期比2.8%増、前年同期比24.1%増)▽金属製品業、2,674億元(前期比8.5%減、前年同期比8.3%増)▽機械設備業、2,354億元(前期比4.8%減、前年同期比2.8%増)──だった。

 王副処長は、今後、世界景気の回復に伴い、▽高性能計算(ハイパフォーマンスコンピューティング、HPC)▽クラウドコンピューティング▽IoT(モノのインターネット)▽カーエレクトロニクス▽自動化生産ライン──など新しい応用先の需要で、第2四半期の製造業売上高は成長が続くと予測した。

半導体、設備投資が旺盛

 製造業の設備投資などを示す第1四半期固定資産投資は2,597億元で前年同期比17.1%増と、7四半期連続の成長だった。また過去6年の同期で最も伸びが大きかった。

 業種別では、電子部品業が1,771億元で前期比21.6%減、前年同期比29.9%増と、4半期連続での前年比2桁成長だった。王副処長は、半導体の先進プロセス投資のため、ファウンドリーや半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)、DRAMメーカーが目立ったと指摘した。

 このほかの業種は、▽化学材料業、125億元(前期比20.1%減、前年同期比6%減)▽ベースメタル業、72億元(前期比16.6%減、前年同期比16.5%減)▽コンピューター電子光学製品業、65億元(前期比12.7%減、前年同期比31%減)──と、軒並み前年割れだった。

【表】