ニュース 政治 作成日:2017年6月14日_記事番号:T00071080
パナマが中国との国交樹立、台湾との断交を発表したことを受けて、呉釗燮総統府秘書長は13日、「両岸(中台)情勢を改めて評価し直す」と発言した。過去1年以上にわたって蔡英文政権としての善意を示してきたものの全く効果がないため、今後は中国により強い態度を取っていくことを予告したと受け止められている。
硬い表情の呉釗燮総統府秘書長。パナマが台湾に断交を通告したのは中国との国交樹立の記者会見のわずか40分前で、長年の友好関係があったものの誠意ある別れとはならなかった(13日=中央社)
14日付自由時報によると、呉秘書長の発言についてある官僚は、「両岸の現状維持政策を見直すのか」との質問に対し「あらゆる可能性を排除しない」と回答した。
蔡政権は発足以来、「一つの中国」の「1992年の共通認識(92共識)」は承認しない一方で、「現状維持」を掲げて独立を志向せず、刺激的な言動を控える形で中国に善意を示してきた。ところが中国は「92共識」が両岸交流の前提との立場を崩さず、台湾の国際活動空間への圧迫を強化しているため、蔡政権は今後、民主、人権といった面で台湾の存在感をアピールしていくことが考えられる。台湾師範大学の范世平・政治学研究所教授は、チベットのダライ・ラマ14世やウイグル民族運動の指導者、ラビア・カーディル氏を台湾に招いたり、香港の民主化運動を支持する可能性があると指摘した。
総統府の表明に対し同日付中国時報は「虚勢を張っても無益」と辛辣(しんらつ)な評価を下した。台湾にとって外交はすなわち両岸関係の延長であり、両岸関係を安定させられなければ外交に問題が生じるのは当然とした。そして、今回蔡総統は中国を非難したが、中国から見れば馬英九前政権時代の「92共識」に基づく安定した両岸関係を破壊したのは蔡総統であり、批判を的外れと受け止めるはずと指摘した。
「ほとんどが中国に興味」
李登輝政権の末期に外交部長、陳水扁政権の前半に駐米代表を務めた程建人氏も、中台関係を改善しない限り、外交の問題は続くと警告した。台湾は中南米で正式な外交関係を持つ国が依然11カ国あるが、その大部分と関係を保てなくなるとの見方が出ていることに対して「あながちオーバーではない」と懸念を示した。
馬政権の初期に外交部長を務めた欧鴻錬氏は、台湾と外交関係を持つ国は、ほとんどが中国との国交樹立に興味があると説明。北京がその気になれば、バチカンやパラグアイを台湾から奪うことは可能との見方を示した。
「断交ドミノ現象」が起きる可能性は、台北と北京の双方から指摘されている。中国社会科学院台湾研究所の曽潤梅主任は「バチカン、ホンジェラス、ニカラグアなどが中国との国交樹立を列を作って待っている」と自信を示した。ただ、断交ドミノは急なペースにはならないとの予測も出ている。中国人民大学国際関係学院の時殷弘教授は「台湾人民の反感を買わないよう、ゆっくりと締め上げるだろう」と語った。
米国の反応うかがう
13日付経済日報は、中国が今のタイミングでパナマとの国交樹立を仕掛けたのは、中国が米トランプ政権の反応をうかがうためとの見方を示した。米中首脳会談以降、トランプ大統領は中国寄りのスタンスが目立っており、こうした中、米中台3者関係の現在の状況を確認する意味を持つとの分析だ。パナマは、運河を持つ戦略的な重要性から、米国は中国との国交樹立を望んでいないとの観測も出ていた。
国交樹立の共同コミュニケを交換する中国の王毅外相(右)とパナマのサイン・マロ副大統領兼外相(左)。パナマが今後台湾との一切の公的接触を行わないことを約束する、台湾にとって前例のない厳しい条文が盛り込まれた(13日=中央社)
そして米国はヘザー・ノーアート国務省報道官が13日、中台に対話を行うよう呼び掛けた。また、両岸のどちらかが台湾海峡の現状を一方的に変更することに反対するとくぎを刺した。台湾による対中姿勢の調整表明を念頭に置いた可能性はあるものの、パナマが国交相手を台湾から中国に切り換えたことへの評価はなく、経済日報の分析が正しければ、中国は今回、パナマを舞台とした外交戦で完勝したことになる。
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