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永豊金董事長を勾留、上海のビルめぐる背任容疑


ニュース 金融 作成日:2017年6月19日_記事番号:T00071158

永豊金董事長を勾留、上海のビルめぐる背任容疑

 金融持ち株会社、永豊金融控股(シノパック・フィナンシャル・ホールディングス)の何寿川董事長(72)は18日、会社の資金850万米ドルで他社株転換可能債(EB)を購入して上海市一等地での大型商業ビル建設に投資し、株主の権益に損害を与えたとして、証券公益法の特別背信罪(特別背任罪)と金融控股公司法違反の疑いで勾留された。何董事長は「単なる手続き上の不備だ」と容疑を否認している。永豊金は近年問題が続発しており、同族経営によるコーポレートガバナンス(企業統治)や金産分離(金融と産業の分離)原則などの課題が指摘されている。19日付聯合報などが報じた。

/date/2017/06/19/00bk1_2.jpg何董事長(中)。金管会は19日、董事長解職処分を命じた(中央社)

 検察が指摘している主な問題は、▽永豊金の孫会社のグランドキャピタル(GC)が三宝建設傘下のペーパーカンパニーJ&Rに無担保で53億9,000万台湾元(約200億円)を違法に融資し、資金の大部分が上海市の上海1788ビルの持ち株会社、スターシティー社に流入▽永豊金が三宝建設に融資しながら、三宝建設傘下のジャイアントクリスタル社が発行した他社株転換可能債にも投資しており、金産分離原則に反する疑い▽永豊金が、何董事長の妻の張杏如氏が董事を務めるスターシティー社に融資したことは、利害関係者間の取引に当たる──の3点。

余罪を調査

 検察の調べによると、何董事長が主導する投資会社の永豊餘全球が2010年12月に上海1788ビルの賃料として、親会社(永豊餘本社)から850万米ドルを借り受け、土地開発部の張金榜経理が11年6月、この資金850万米ドルで三宝建設傘下のジャイアントクリスタル社が発行したスターシティー社の他社株転換可能債を購入した。スターシティー社は上海1788ビルの持ち株会社で、何董事長の妻の張杏如氏が董事を務め、張杏如氏の秘書の王冬玲氏が大株主だ。また、三宝建設の李俊傑董事長はジャイアントクリスタル社とスターシティー社の董事を務める。

 これらより検察は、上場企業は資産交換方式による中国での投資利益取得が認められていないが、何董事長は利害関係者間の取引を通じて、社債購入の名義で海外に資金を流出させたとみている。

 また検察は、何董事長は同じ手法で、電子ペーパー世界最大手、元太科技工業(イーインクホールディングス、EIH)を通じてさらに850万米ドルでジャイアントクリスタル社の転換社債を購入した疑いもあるとみて捜査している。

何董事長の独断か

 何董事長は尋問で、他社株転換可能債を850万米ドルで購入したことについて、自身が主導しておらず、多くは手続き上の不備で、会社に損害も与えていないので、背任に当たらないと主張している。

 ただ、永豊餘全球は、永豊餘本社の邱秀瑩・前董事長が口頭で同意し、呉忠福・会計主管が押印しただけで850万米ドルを借り受けており、裁判所は何董事長の独断だったとみている。

 また、張金榜・永豊餘土地開発部経理が金融監督管理委員会(金管会)の調査に対し、書類の決済欄の「何董事長」の文字を塗り潰して書類を提出したことや、三宝建設の李俊傑董事長の妻の廖怡慇氏が、家宅捜索の際に関連文書をソファーの隙間に隠したことも何董事長の関与を疑う理由だ。両者も証拠隠滅の恐れがあるとして勾留された。

邱氏が董事長代行

 董事長の勾留は永豊商業銀行(前身は台北国際商業銀行)設立以来70年で初めて。永豊金は17日、邱正雄氏(元行政院副院長)が董事長を代行すると発表した。邱董事長代理は、新しい経営陣で、同族経営の行き過ぎの疑いを晴らすと表明した。

/date/2017/06/19/00bk2_2.jpg邱董事長代理(左)は18日、内部統制を強化し、リスク管理を徹底すると表明した(18日=中央社)

 永豊金は銀行、証券、リース、投資、先物などの子会社を傘下に持つ金融持ち株会社。永豊餘集団は、▽東南アジア最大の製紙メーカー、永豊餘投資控股▽イーインク▽新薬開発の太景生物科技(タイジェン・バイオテクノロジー)──などを傘下に持つ。グループ全体の時価総額は1,700億台湾元(約6,200億円)に上る。