ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

鴻海「東芝メモリは諦めない」、日米韓連合に優先交渉権


ニュース 電子 作成日:2017年6月22日_記事番号:T00071242

鴻海「東芝メモリは諦めない」、日米韓連合に優先交渉権

 東芝の半導体子会社、東芝メモリ(TMC)売却の優先交渉権が産業革新機構(INCJ)などの日米韓連合に決定し、買収競争に敗れた格好の鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は22日の株主総会で、「東芝の案件はまだ終わったわけではない。チャンスは残されている」と諦めない姿勢を示した。一方、東芝が大株主で、NAND型フラッシュメモリー用コントローラIC設計の群聯電子(ファイソン・エレクトロニクス)は、東芝との協力関係が一層深まると期待感を示した。22日付工商時報などが報じた。

/date/2017/06/22/00honghai_2.jpg郭董事長(中)は、「シャープ買収当時と状況が似ている」と語り、東芝メモリ買収をめぐる攻防が続く可能性を示唆した(22日=中央社)

 東芝は21日、東芝メモリ売却の優先交渉先を▽産業革新機構▽ベインキャピタル▽日本政策投資銀行(DBJ)──から成るコンソーシアムに決定したと発表した。東芝メモリの企業価値、海外への技術流出懸念、国内の雇用確保、手続きの確実性などの観点から総合的に評価したと説明した。6月28日開催予定の定時株主総会までの最終合意、各国競争法などの必要な手続きを経て、2018年3月末までの売却完了を目指す。

 東芝と半導体メモリー合弁会社の株式持ち分をめぐり訴訟中のウエスタンデジタル(WD)は同日、同社の同意なしに東芝が半導体メモリー事業を売却することに反対するとの声明を発表した。

 郭董事長は同日、経済産業省の主導で成功した例など見たことがないし、日本の金融機関も実際は反対しており、不確定要素は多く、まだ確定していないと語った。

 鴻海の主管も21日、最後まで諦めないとコメントしている。業界では、鴻海は東芝メモリ売却先が最終決定するまで、海外パートナーを巻き込んで、資金の潤沢さや各国での競争法審査の優位性などを日本側にアピールし、逆転の可能性に賭けるとみられている。

中国への技術流出懸念が敗因

 鴻海傘下シャープの戴正呉社長は先日、日本メディアに対し、他のコンソーシアムと比べて(鴻海陣営なら)中国政府の厳しい競争法審査を通過しやすいと強調したが、東芝は21日の取締役会の後、もし中国でNAND型フラッシュメモリーを生産すれば、高度な技術を中国に取られてしまうと説明している。

 22日付自由時報は、韓国のSKハイニックスが融資により参加するベインキャピタルを含む日米韓連合が選ばれたことから、日本政府は韓国より中国の方が脅威と考えていると指摘した。

後工程の受注増も

 このまま日米韓連合が買収した場合、従来の東芝の半導体事業の経営陣が東芝メモリの経営を主導することになる。

 ファイソンは、従来のビジネスエコシステムが維持され、東芝との関係がさらに良くなると予測した。

 半導体メモリーのパッケージング・テスティング(封止・検査)大手、力成科技(パワーテック・テクノロジー、PTI)にとっても、受注流出の懸念がないどころか、将来はNAND型フラッシュメモリーの封止・検査の受注が増える可能性がある。

NAND価格上昇、Q4に一段落

 市場調査会社、集邦科技(トレンドフォース)は、売却先決定後、東芝メモリとウエスタンデジタルは第4四半期に3D(3次元)構造NAND型フラッシュメモリー月産能力の割合が、従来計画通り30~40%まで高められると予想。これにより、第4四半期にNAND型フラッシュメモリーの需給が均衡に向かい、昨年より続く価格上昇も一段落すると予測した。

/date/2017/06/22/01nand_2.jpg

 トレンドフォースによると、東芝の経営不振が足を引っ張り、東芝メモリとウエスタンデジタルは第2四半期、月産能力の10~15%しか3D構造NAND型フラッシュメモリーに当てられていない。サムスンは40%以上、マイクロン・テクノロジーとインテル陣営も40%まで高めている。

 トレンドフォースはまた、売却先のNAND型フラッシュメモリー需要が膨大で、長期的に東芝メモリの生産能力がサムスン電子を上回ると予想した。

 現在、サムスンのNAND型フラッシュメモリー生産能力は市場シェア36.6%。東芝メモリとウエスタンデジタルが合計34.7%で、SKハイニックスは11.2%だ。

【表】