ニュース 運輸 作成日:2017年7月3日_記事番号:T00071428
蔡英文政権の内需振興策として8年で8,800億台湾元(約3兆2,500億円)を投じる大型インフラ整備計画「前瞻基礎建設計画」のうち、予算の半分を投じる鉄道整備事業について、地域の発展につながると期待が高まる一方、地方政府の財政を圧迫するだけと懸念の声も高まっている。予算全体の2割が振り向けられる高雄市では、陳菊市長が、従来の鉄道敷設は北部に集中していたため、南北の均衡発展を図れると利点を強調した。ただ、既存のMRT(都市交通システム)でさえ運賃収入による黒字化が困難な中、果たして巨額の血税を投じるほど需要があるのか疑問も残る。2日付蘋果日報などが報じた。
国民党の林徳福・立法院議員団総召集人(右2)ら数百人は3日、前瞻基礎建設特別条例の強行突破に反対するとデモを行った(3日=中央社)
林全行政院長は1日、長期的な発展と国家全体の鉄道敷設の需要を考え、前瞻基礎建設特別条例を根拠として特別予算を編成すると表明。立法院で議論し、厳しく審査すると述べ、決して無駄遣いは望んでいないと説明した。
前瞻基礎建設特別条例は5日までに立法院で成立すれば、今週中にも行政院が立法院に第1期1,100億元余りの特別予算案を送付する見通しだ。
台鉄路線とほぼ重複
前瞻基礎建設計画のうち、高雄市では、鳥松区から三民区、鳳山区、前鎮区など人口集中地域を通り、地下21駅をつなぐMRT黄線(全長21.2キロメートル)が予算1,454億7,100万元。MRT紅線の岡山駅から路竹区への延伸が高架8駅(全長13.21キロメートル)で予算303億4,300万元。これらに高雄海洋科技産業創新専区の55億元、亜洲新湾区(アジア・ニュー・ベイエリア)のファンテック体感科技園区の10億元を合わせた総経費は1,823億元で、前瞻基礎建設計画の20.72%を占める。
国民党の陳宜民立法委員は、既存の高雄MRT紅線と橘線の昨年の利益がわずか8,000万元余りなのに、高雄市政府はMRT黄線の収入を358億元と極めて高く見積もっており、次世代に負債を残すことになると警告した。
2008年に開通した高雄MRTの運営会社、高雄捷運(KRTC)は昨年初めて黒字転換を果たしたところだ。今年第1四半期の1日当たり乗客数は延べ18万4,000人。高雄市政府捷運工程局の呉義隆局長は、MRT黄線の新設や延伸で、
1日当たり乗客数が延べ66万人に増えると期待している。
ただ、環境保護団体は、黄線の新設でなく、路線がほぼ重複する台湾鉄路(台鉄)の改善で済むと指摘した。
市民の間でも、早く敷設してほしいとの声がある一方、高雄は広いのでバイク利用の習慣が根付いている、利用率が低ければ維持費が負担になるだけなど反対の声もある。
経費の3倍の経済効果?
一方、桃園市は、▽台鉄の地下化、964億900万元▽MRT緑線の敷設、982億6,400万元▽MRT緑線の延伸、349億1,300万元──の計画だ。予算2,300億元のうち中央政府の補助金が1,058億元、桃園市の負担が1,241億元。
鄭文燦桃園市長は、前瞻基礎建設計画には今後10年の総予算の5%に当たる536億元を当て、残り685億元は収入で賄うと説明した。MRT緑線は、八徳駅~桃園機場捷運(桃園空港MRT)坑口駅まで21駅(全長27.8キロメートル)を結び、沿線の人口150万人に台北・新北・桃園の1日生活圏を創出すると指摘。沿線開発で、桃園市の人口は216万人から250万人に増え、経費の3倍の経済効果が見込めると述べた。
しかし、乗車率が低ければ、市政府の財政負担が増えるだけとの指摘もある。
今年3月に開通した桃園空港MRTの運営会社、桃園大衆捷運(桃園メトロ)は、累積損失が17億元に上った。ただ、1日当たり乗客は平均5万6,000人で、想定していた4万6,000人より多く、当面は赤字が続くものの6年での収益均衡を目指す。
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