ニュース 商業・サービス 作成日:2017年7月19日_記事番号:T00071750
誠品(エスライト)グループの創業者、呉清友董事長が18日夜、心臓病の再発で急死した。68歳だった。誠品書店は初の24時間営業、洗練された内装、しゃれたデザインの雑貨販売の複合店など独自の取り組みが奏功し、年間延べ1億人が訪れる台湾のランドマークとなり、国際的評価も高い。呉氏は書店にとどまらず多角化を進めており、文化に情熱を注ぎ続け、台湾のクリエイティブ産業の発展に寄与したとして、各界から死去を惜しむ声が相次いだ。19日付蘋果日報などが報じた。
呉氏は「本を買わなくても書店に来てほしい」と語り、本は重いからと椅子を設置した(中央社)
呉氏は18日、台北市のオフィスで倒れ、消防が駆け付けた午後6時20分過ぎには呼吸と心拍が停止しており、病院に搬送されたが帰らぬ人となった。呉氏は先天性の心臓肥大を患っていた。
呉氏に誠品の設立に影響を受けたと言わしめた、台湾を代表する現代舞踊団、雲門舞集(クラウド・ゲイト)創業者の林懐民アートディレクターは「信じられない」と語った。その上で、誠品書店は人々の読書習慣だけでなく、生活や考え方を変えたと指摘した。林氏は以前にも、赤字続きでも出店を続けた誠品は「台湾の奇跡」「台湾の誇り」だと高く評価していた。
鄭麗君文化部長は、誠品書店は台湾の読書環境を変え、生活に美学をもたらし、国際的に注目を集める台湾ブランドになったと述べ、林氏の功績をたたえた。
15年の赤字経営
呉氏は1950年、現在の台南市将軍区で生まれた。ホテルの飲食設備の輸入会社の営業マンだったが、31歳で全株式を引き継いで社長に就任。芸術に関する書籍好きが高じて38歳だった89年、1階で輸入品を販売しながら、地下で芸術書籍の販売を開始したのが「誠品」の始まりだ。
誠品書店は95年に台北市敦化南路に移転し、99年に同店の24時間営業を開始した。「眠らない街・台北」は治安が良い上、文化的に成熟しているので、夜更かしする人が書店を訪れると判断したという。設立以来15年間赤字が続いたが出店拡大を諦めず、複合店が軌道に乗った04年に黒字転換を果たした。
中台港に46店
誠品グループは現在、誠品が書籍やギャラリーなど芸術文化産業を担い、誠品の完全子会社、誠品生活(エスライト・スペクトラム)が商業施設、飲食店などを担う。
13年にオープンした誠品生活の松煙店(台北市信義区)は、書籍を中心に、センスのよい生活雑貨や文具を販売し、手芸体験などができるほか、飲食店、映画館、コンサートホール、ホテルまで併設する複合型商業施設で、16年に米CNNに「世界で最もクールな百貨店の一つ」と評された。誠品生活の16年売上高は42億6,200万台湾元(約160億円)で前年比11.5%増、純利益は4億2,100万元で2.2%増だった。
今月15日、台北MRT(都市交通システム)中山駅の地下街に書店街「誠品R79」がプレオープンし、誠品グループの実店舗は46拠点(台湾41店、中国1店、香港3店)となった。今後、日本や欧州への進出も視野にある。
呉氏は数日前、「誠品R79」にも視察に訪れていたという(YSN)
長女が董事長就任か
あす20日には、誠品ブランドのこれまでの道のりを記した呉氏の自伝「誠品時光」の共同発表が予定されており、呉氏、長女の呉旻潔副董事長らが出席するはずだった。
呉氏の死去を受け、既に誠品の事業を引き継いでいる呉副董事長が今後董事長に就任するとみられている。なお、呉氏の長男、吳威廷氏は09年に死去している。
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