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行政機関の冷房停止、緊急節電対策に「本末転倒」批判


ニュース 公益 作成日:2017年8月1日_記事番号:T00071985

行政機関の冷房停止、緊急節電対策に「本末転倒」批判

 台風9号(アジア名・ネサット)による和平火力発電所(花蓮県秀林郷)の送電塔が倒壊した影響で電力供給が逼迫(ひっぱく)の度合いを強めた中、行政院は31日、中央・地方の行政機関に対し、修理が完了するまでの間、日中の暑さがピークとなる午後1時から3時まではクーラーの「冷房」の使用を中止し、「送風」のみとすることを求めた。1日付経済日報は、原発を含めて稼働できる発電所が存在しており、公務員に不合理な忍耐を強いるのではなく、電力供給に真剣に取り組むよう蔡英文政権に要求した。

/date/2017/08/01/00Power_2.jpg送電塔1基の倒壊だけで緊急節電対策が必要になったことは、蔡政権の脱原発政策の取り組みペースが乱れていることを示している(30日=中央社)

 行政院が冷房の使用中止を求めたのは、中央各部会(省庁)の他、直轄市を含む▽各県市政府▽立法院▽司法院▽考試院▽監察院▽国家安全会議(国安会)▽総統府──。午後1時から3時までの間、クーラーを「送風」で使用し、室内温度を28度以上に保つこと、不必要な照明を減らすこと、および人の少ない6階建て以下の建物ではエレベーターの稼働を1台に限定することを要求した。

 また、民間に対しても、▽百貨店▽コンビニエンスストア▽レストラン▽スーパーマーケット▽ホテル▽銀行──などで、冷房の26度以下への設定や冷気の外部への漏れがあった場合、指導して、改善が見られなければ罰金2万~10万台湾元(約7万~37万円)を科すとの方針も表明した。行政院は、罰金は最終手段で、あくまで節電に市民の協力を得ることが最大の目的と説明した。

3日と4日は「赤信号」確実

 送電塔が倒壊した和平火力発電所は、民間経営の台湾東部最大の発電所で、電力供給量が130万キロワット(kW)減少し、復旧には早くても1カ月を要するとみられる。台湾電力(台電、TPC)は2週間以内に電力供給量を拡大させる計画だが、それまでの間は電力の供給逼迫が深刻化する。

 TPCは、予備電力量は3日に75万8,000kW、4日に85万8,000kWまで低下し、「供給制限を警戒」を示す「赤信号」点灯の基準となる90万kWを下回るのは確実との見方を示した。予備電力量が50万kWを下回り「黒信号」が点灯すれば、電力使用量が多い大口契約者への供給を制限する措置が取られることとなる。その場合、経済活動への影響は必至だ。

「電力供給に注力を」

 行政院が呼び掛けた公共機関・民間の節電対策に対し経済日報は、注力すべきは電力供給の取り組みであり、本末転倒だと厳しく批判した。

 蔡政権は脱原発政策推進を念頭に、TPCの大潭発電所(桃園市観音区)に66億元を投じて非常用発電機2基を設置したものの、7月までに発電できていない。また、保守点検の完了した第1原発(新北市石門区)1号機と第2原発(新北市万里区)2号機の稼働も、昨年停止させた台湾化学繊維(フォルモサ・ケミカルズ&ファイバー、台化)の彰化コージェネレーション(熱電併給)システムも再稼働させる考えがなく、経済日報は「税金の無駄遣いになっている」と批判した。

 同紙はさらに、公共機関への節電呼び掛けは、果たしてどの程度の協力が得られるのか分からず、効果も限られていると指摘。電力不足の際に市民の犠牲を強いるのではなく、発電所の新規建設など、供給不足の改善を考えるべきだと訴えた。